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第四世代

光編 クレバーさ

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そんな専用の銃を構えたドーベルマンMPMとホビットMk-Ⅱを乗せたヘリは、要救助者の真上に位置取った。ヒト蛇ラミアへの牽制と同時に救助を行うためだ。

こうしてホビットMk-Ⅱをワイヤーで降下させる。一瞬の躊躇もない。壊れたところで死ぬわけじゃないロボットは恐怖しないからだ。

要救助者の方も、見慣れない回転翼機とロボットとは言え、自分を救助しようとしてくれてるんだろうというのは理解したらしく、自ら手を伸ばしてくる。

すると、タブレットで映像を見ていたシオとレックスが、

「ルイーゼ!?」

「ルイーゼ・バーンシュタインか」

と声を上げた。

シモーヌは錬慈れんじにおっぱいをあげた後で眠っていたから気付いていなかったが、ビアンカと久利生くりうも、

「今度はルイーゼ?」

「もちろん今までとは状況が違うけれど、こう立て続けだと不思議な気分だね」

とも口にしていた。

確かに、これまで三十年ほどで、シモーヌ、ビアンカ、久利生くりう、メイガスの四人だったのが、今年だけで三人、生きることができなかったレックスを含めれば四人目だ。だからこれまで助けられなかった事例があったんだろうということでもある。

それを悔やんでも仕方ないが、やっぱりいい気はしないな。

無論、今回がたまたま連続しただけという可能性もありつつも。

いずれにせよ、無事に救出できたのはよかった。

そして、<ルイーゼ・バーンシュタイン>も、今の時点では記憶が戻っていないのか、ヘリに収容されても戸惑っている様子だった。

一方、ヒト蛇ラミアの方はと言えば、<対怪物用打撃銃>による銃撃を受けて、水中に没し、姿を消した。その上ですさまじい速度で移動し、プローブの探知圏外に脱してしまう。正確には、

『他の音と区別がつかなくなる距離まで離れた』

ということだが。水中にも多種多様な生物がいるからな。あまり距離があるとそれに紛れてしまうんだ。

「逃げた……?」

ひかりがそう声を漏らす。それは俺も思ってしまった。

これまで、みずちがく夷嶽いがくも、そしてばんと対峙したヒト蛇ラミアも、基本的には『逃げる』という選択を行わなかった。きょう牙斬がざんは逃げたこともあったが、それはあくまで体勢を立て直すための<戦略的撤退>だったな。ということは、

「このヒト蛇ラミアも、自分が不利だと判断して出直すことにしたのか……?」

だとすると、凶暴なだけでなく、そういう判断もできるクレバーさも持ち合わせているという可能性があるのか。

これは手強いぞ。できれば眠らせて台地の麓にでも移送したかったが、一筋縄ではいかなそうだ。

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