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第四世代

光編 臭いものに蓋

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人間(地球人)ってやつは、まったく何の見返りもなく一方的に与えるということがなかなかできない生き物だ。

『親だから何の見返りもなく子供を愛する』

『親だから何の見返りもなく子供を育てる』

というのも、並大抵の心掛けでできるようなことじゃない。ゆえに、<子供の可愛さ><愛らしさ>そのものがある程度の見返りになるんだと思う。

が、正直、それだけじゃ見返りとしては十分じゃない場合も多いだろうな。そうなると、

『生んでやった恩を押し付けたい』

『育ててやった恩を押し付けたい』

的な心理状態になること自体は無理もないんだろう。

<子供を可愛いと思えない親>

だっているだろうし。

しかし、何度も言うように、子供をこの世に送り出したのは親の一方的な都合であり勝手でしかない。子供に対して事前に確認したわけでも承諾をもらったわけでもない。それもまた事実。この辺りの齟齬が親子関係に軋轢を生み、ひいては人間(地球人)として生きること自体への不信感や不快感が芽生え、

『こんな世界には何の価値もない!』

と自暴自棄になる人間(地球人)も出てくるということだと推測されているそうだ。

なればこそ、『育児の負担を減らす』というのは大きなメリットがあるとされている。育児の負担が減れば精神的な負担も減って、心理的な問題も緩和されるという形で。

今の俺は、そういうものを改めて再検証するために敢えてサポートを限定して育児に挑んでる。

『育児の苦労を乗り越えてこそ親として成長するし子供への愛情も育まれる!』

とかなんとか言うのもいたが、いやいや、同じだけの苦労をしても人間として成長しない親もいるし、子供への愛情なんかまったくない親だって現にいたぞ? そういうのを無視した精神論根性論が結局は人間(地球人)そのものの首を絞めていたのは事実のはずだ。

しかも問題が発生したら<個人の資質の所為>にして、その向こうにある本質的な問題については『臭いものに蓋』で見て見ぬふりをしてきた。それがメイトギアの実用化に伴い徐々に明らかになってきたという流れがあったそうだ。

それが分かっている上にこうしてロボットは用意できてる。ならば、適応できない人間が決して少なくない精神論根性論で基準を作るのは愚か以外の何ものでもないだろうさ。

<権力を握った人間にとって都合のいい社会>

が上手くいったためしはない。現状、俺はここではすべての権限を握っている唯一無二の存在だ。だからこそ、俺にとって必ずしも都合がいいわけじゃない存在についても無理なく生きていける社会であることが必要なはずなんだ。

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