上 下
1,752 / 2,387
第四世代

光編 できることとできないこと

しおりを挟む
だが、どれほど<茶番>に見えようとも、ここに出来上がっていくであろう社会に必要なことを検証するために必要なんだと思えばこそやってるんだってのはエレクシアも分かってくれてるからこそ、ぎりぎりまで干渉はしないでいてくれてる。

俺がもし、前後不覚になり発作的に錬慈れんじに暴力を振るおうとしたところで彼女なら確実に止めてくれるだろう。それが分かってるからこそできる無茶でもあるんだよ。

実際、自分が起きてるのか寝てるのかも判然としなくなってくる。家事の一切をセシリアに任せていてもこれだ。こんなものを母親一人にやらせようなんて正気の沙汰とは俺には思えないな。

無論、一人で完全にこなせるタイプの人間もいるんだってのは分かる。でも、ほとんどの人間が確実にこなせるんでなければ、それは<当たり前>とは言わないはずだ。たとえ俺ができたところで<当たり前>にはならない。

ましてや実際にできてないわけで。

ならばやっぱり、しっかりとしたサポート体制が必要だな。今の俺の状態をエレクシアにすべて記録してもらって、そのサポートをどう行うか、ホビットMk-Ⅱでシミュレートする。

これは、シオとレックスの間に子供が生まれた時にも活かされることになるだろうな。

レックスは言う。

「そうだね。私達があの不定形生物の中の世界で瑠衣るいを育てていた時にも、仲間達の助けがあってこそのものだったと感じるよ。決して私とシモーヌの二人だけでできたことじゃない。その事実を認めなければと思う。

地球人はえてして誰かの助けを借りることを<恥>と考えてしまいがちな生き物であるものの、何もかもを誰かに頼ってしまうのは甘えだと私も思うものの、だからといって自分が現にできないことを『できる』と言い張って結果としてできなかった時のリスクを無視するのは理性的じゃないだろう。なればこそ、できない時にはしっかりと誰かの助けを借りるべきだと考える」

ってな。自分を虚飾によって誤魔化さず、粉飾せず、できないことは『できない』と認められる勇気を持つ彼だからこそ、シモーヌは愛したんだと実感する。

そうだ。見栄を張ってできもしないことを『できる』と口にするような人間は信用できない。それが子供ならまだしも、いい歳をした大人が言ってたりするのは本当に情けないと思う。

『事実を事実として認める勇気がない』

ということだからな。ここではそんな人間は生きていくこともままならないだろう。

もっとも、たとえそうでも見捨てることはしないつもりだが。

とは言え、無駄に見栄を張って無理をして仲間を危険に曝すようなのは困りものだな。

その意味でも、今のうちに俺自身を使って『できること』『できないこと』を確認するというのもある。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

精霊のお仕事

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:78pt お気に入り:123

転移したらダンジョンの下層だった

Gai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:4,487pt お気に入り:4,653

悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:13,738pt お気に入り:6,021

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,094pt お気に入り:281

追放の破戒僧は女難から逃げられない

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:633pt お気に入り:167

冒険がしたい創造スキル持ちの転生者

Gai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:5,090pt お気に入り:9,008

異世界転移で生産と魔法チートで誰にも縛られず自由に暮らします!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:234pt お気に入り:2,452

処理中です...