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第四世代

シモーヌ編 普通分娩

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新暦〇〇三六年十一月十三日



萌花ほのか、二歳二ヶ月。メイ、八ヶ月。蒼穹そら、七ヶ月。未来みらい、三歳九ヶ月。黎明れいあ、一歳十一ヶ月。ケイン、イザベラ、キャサリン、それぞれ一歳六ヶ月。

みんなとても元気に健やかに育ってくれてるところに、また新たに子供が生まれる。シモーヌと俺の子供だ。

「ふう…ふう……」

陣痛が始まり、俺とセシリアに伴われて、シモーヌは光莉ひかり号の医務室へと入る。専用の分娩台がないこともあり、彼女も座位分娩を選択した。と言うか、例の不定形生物内で瑠衣るいを生んだ時も座位分娩だったそうだ。レックスに掴まり、ビアンカとは別の看護師経験のある女性に補助してもらって。何しろそこには、まともな産院なんかなかったしな。それでも無事に瑠衣るいを生んでみせた。

そして、瑠衣るいを生んだ経産婦として再現されたこともあってか、陣痛が始まってからわずか三時間、医療用ナノマシンを節約するために敢えて普通分娩を選びながらも超安産で男の子を生んだ。

名前は、

錬慈れんじ……あなたの名前から一文字取って錬慈れんじだよ。お父さん……」

シモーヌがそう付けてくれた。

「ああ、よく来てくれた、錬慈れんじ

彼女の胸に抱かれ、「びゃあ、びゃあ!」と元気な鳴き声を上げる赤ん坊を見ながら俺も笑顔になっていた。さらに、

「ありがとう、シモーヌ。愛してる」

俺の子を産んでくれた彼女を労う。するとシモーヌは、

「……正直、不安もあった…レックスへの気持ちとあなたへの気持ちとでぐらついてしまってて、この子を愛せるか、自信がなかったんだ……でも、この子を見て改めて確認できたよ。錬是れんぜ、私はちゃんとあなたを愛してる。レックスのことも忘れてはいないけど、あなたと、あなたの子供の錬慈れんじも愛してる。この気持ちに嘘はないんだ……」

涙ぐみながら言ってくれた。彼女自身、何とも言えない不安の中でこれまで過ごしてきたんだというのを改めて打ち明けてくれた。

「うん……うん……それでいい。それでいいさ……俺は今の君を愛してるんだ。それだけなんだよ……」

俺も正直な気持ちを打ち明ける。

彼女は<俺とは別の人間>だ。すべてが俺の思い通りになるわけじゃない。その事実を承知してもなお、俺は彼女を愛することができていた。愛していられるパートナーだった。ここまでの諸々が、シオが現れ、レックスが現れ、<もう一人のレックス>を送り、シモーヌの透明な体の中でみるみる大きくなっていく錬慈れんじの成長を見守ってきたすべてが、それを再確認させてくれたんだ。

物語的には盛り上がるものじゃなかったとしても、そんなことは俺達には何の関係もない。俺達はただ俺達の人生を送るだけだ。

錬慈れんじ……

シモーヌ……

本当にありがとう。

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