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第四世代
シモーヌ編 考えなきゃいけないこと
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親が子供に対して恩を売らずにいられないのは、結局それだけ、
『育児が大変だ』
ということに他ならないんじゃないか? 大変だから、つい、
『報われたい』
と思ってしまうんじゃないか? だったらそこまで大変な思いをしなくても済むようにする必要があると思うんだよ。
地球人社会ではメイトギアをはじめとしたサポート用のロボットも充実してることもあり、昔に比べればずっと楽になったそうだ。もっとも、『楽になった』とは言え、それでもあくまで『昔に比べれば』でしかないから、俺が知る限りではまだまだ子供に対して『生んでやった』『育ててやってる』と考える親の存在は決して珍しいものでもなかったと実感している。
しかし今の俺は、幸いにもそこまで考えずに済んでいる。これは、光やビアンカや久利生も同じだ。灯もそんな風には考えていないそうだ。周囲のサポートがあることで、精神的に余裕が持てているからというのもあるんだろうな。
シモーヌの胎内で確かに生きている我が子の姿を見ながら、俺はしみじみとそんなことを考えた。何度も何度も考えてきたことだが、これからもさらに何度も何度も考えることになることだと思う。
いや、<考えなきゃいけないこと>、か。
それを考えるからこそ、俺は、シモーヌのことを受け止めていられるんだろう。自分じゃない誰かのことを考えて小さく溜息を吐いている彼女のことも。
彼女が奴隷でも召使でもロボットでもないことを理解して、人間であるという前提に立てばこそ、そのままの彼女を受け止めることができるんだ。
『俺以外の男のことなんて考えるな!』
とか言ったところで、できないものはできないんだよ。
彼女にとってレックスの存在はそんな簡単なものじゃないんだ。
なにより、それほど愛していた相手のことを、まるでロボットのメモリーから消去するかのようにあっさりと忘れてしまえるような人だったら、俺はたぶん、シモーヌのことをここまで愛していない。愛せていない。
だってそうだろう? 彼女がもしそんな人間だったらなら、何か都合が悪いことがあったらあっさり俺のことを忘れてしまえるかもしれないんだぞ? それはいくら何でも寂しいだろ。
彼女がレックスのことを忘れられないというのであれば、それだけ情の厚い人間だという証拠なんだよ。
忘れない上で、なるべくそれを口や態度に出さないようにしてくれている。加えて、溜息だってそんなに頻繁に漏らしているわけじゃない。その程度のことでしかない。
一分の隙もなく常に完璧でいられる人間なんていない。
その当たり前のことを忘れちゃいけないさ。
『育児が大変だ』
ということに他ならないんじゃないか? 大変だから、つい、
『報われたい』
と思ってしまうんじゃないか? だったらそこまで大変な思いをしなくても済むようにする必要があると思うんだよ。
地球人社会ではメイトギアをはじめとしたサポート用のロボットも充実してることもあり、昔に比べればずっと楽になったそうだ。もっとも、『楽になった』とは言え、それでもあくまで『昔に比べれば』でしかないから、俺が知る限りではまだまだ子供に対して『生んでやった』『育ててやってる』と考える親の存在は決して珍しいものでもなかったと実感している。
しかし今の俺は、幸いにもそこまで考えずに済んでいる。これは、光やビアンカや久利生も同じだ。灯もそんな風には考えていないそうだ。周囲のサポートがあることで、精神的に余裕が持てているからというのもあるんだろうな。
シモーヌの胎内で確かに生きている我が子の姿を見ながら、俺はしみじみとそんなことを考えた。何度も何度も考えてきたことだが、これからもさらに何度も何度も考えることになることだと思う。
いや、<考えなきゃいけないこと>、か。
それを考えるからこそ、俺は、シモーヌのことを受け止めていられるんだろう。自分じゃない誰かのことを考えて小さく溜息を吐いている彼女のことも。
彼女が奴隷でも召使でもロボットでもないことを理解して、人間であるという前提に立てばこそ、そのままの彼女を受け止めることができるんだ。
『俺以外の男のことなんて考えるな!』
とか言ったところで、できないものはできないんだよ。
彼女にとってレックスの存在はそんな簡単なものじゃないんだ。
なにより、それほど愛していた相手のことを、まるでロボットのメモリーから消去するかのようにあっさりと忘れてしまえるような人だったら、俺はたぶん、シモーヌのことをここまで愛していない。愛せていない。
だってそうだろう? 彼女がもしそんな人間だったらなら、何か都合が悪いことがあったらあっさり俺のことを忘れてしまえるかもしれないんだぞ? それはいくら何でも寂しいだろ。
彼女がレックスのことを忘れられないというのであれば、それだけ情の厚い人間だという証拠なんだよ。
忘れない上で、なるべくそれを口や態度に出さないようにしてくれている。加えて、溜息だってそんなに頻繁に漏らしているわけじゃない。その程度のことでしかない。
一分の隙もなく常に完璧でいられる人間なんていない。
その当たり前のことを忘れちゃいけないさ。
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