1,735 / 2,642
第四世代
シモーヌ編 考えなきゃいけないこと
しおりを挟む
親が子供に対して恩を売らずにいられないのは、結局それだけ、
『育児が大変だ』
ということに他ならないんじゃないか? 大変だから、つい、
『報われたい』
と思ってしまうんじゃないか? だったらそこまで大変な思いをしなくても済むようにする必要があると思うんだよ。
地球人社会ではメイトギアをはじめとしたサポート用のロボットも充実してることもあり、昔に比べればずっと楽になったそうだ。もっとも、『楽になった』とは言え、それでもあくまで『昔に比べれば』でしかないから、俺が知る限りではまだまだ子供に対して『生んでやった』『育ててやってる』と考える親の存在は決して珍しいものでもなかったと実感している。
しかし今の俺は、幸いにもそこまで考えずに済んでいる。これは、光やビアンカや久利生も同じだ。灯もそんな風には考えていないそうだ。周囲のサポートがあることで、精神的に余裕が持てているからというのもあるんだろうな。
シモーヌの胎内で確かに生きている我が子の姿を見ながら、俺はしみじみとそんなことを考えた。何度も何度も考えてきたことだが、これからもさらに何度も何度も考えることになることだと思う。
いや、<考えなきゃいけないこと>、か。
それを考えるからこそ、俺は、シモーヌのことを受け止めていられるんだろう。自分じゃない誰かのことを考えて小さく溜息を吐いている彼女のことも。
彼女が奴隷でも召使でもロボットでもないことを理解して、人間であるという前提に立てばこそ、そのままの彼女を受け止めることができるんだ。
『俺以外の男のことなんて考えるな!』
とか言ったところで、できないものはできないんだよ。
彼女にとってレックスの存在はそんな簡単なものじゃないんだ。
なにより、それほど愛していた相手のことを、まるでロボットのメモリーから消去するかのようにあっさりと忘れてしまえるような人だったら、俺はたぶん、シモーヌのことをここまで愛していない。愛せていない。
だってそうだろう? 彼女がもしそんな人間だったらなら、何か都合が悪いことがあったらあっさり俺のことを忘れてしまえるかもしれないんだぞ? それはいくら何でも寂しいだろ。
彼女がレックスのことを忘れられないというのであれば、それだけ情の厚い人間だという証拠なんだよ。
忘れない上で、なるべくそれを口や態度に出さないようにしてくれている。加えて、溜息だってそんなに頻繁に漏らしているわけじゃない。その程度のことでしかない。
一分の隙もなく常に完璧でいられる人間なんていない。
その当たり前のことを忘れちゃいけないさ。
『育児が大変だ』
ということに他ならないんじゃないか? 大変だから、つい、
『報われたい』
と思ってしまうんじゃないか? だったらそこまで大変な思いをしなくても済むようにする必要があると思うんだよ。
地球人社会ではメイトギアをはじめとしたサポート用のロボットも充実してることもあり、昔に比べればずっと楽になったそうだ。もっとも、『楽になった』とは言え、それでもあくまで『昔に比べれば』でしかないから、俺が知る限りではまだまだ子供に対して『生んでやった』『育ててやってる』と考える親の存在は決して珍しいものでもなかったと実感している。
しかし今の俺は、幸いにもそこまで考えずに済んでいる。これは、光やビアンカや久利生も同じだ。灯もそんな風には考えていないそうだ。周囲のサポートがあることで、精神的に余裕が持てているからというのもあるんだろうな。
シモーヌの胎内で確かに生きている我が子の姿を見ながら、俺はしみじみとそんなことを考えた。何度も何度も考えてきたことだが、これからもさらに何度も何度も考えることになることだと思う。
いや、<考えなきゃいけないこと>、か。
それを考えるからこそ、俺は、シモーヌのことを受け止めていられるんだろう。自分じゃない誰かのことを考えて小さく溜息を吐いている彼女のことも。
彼女が奴隷でも召使でもロボットでもないことを理解して、人間であるという前提に立てばこそ、そのままの彼女を受け止めることができるんだ。
『俺以外の男のことなんて考えるな!』
とか言ったところで、できないものはできないんだよ。
彼女にとってレックスの存在はそんな簡単なものじゃないんだ。
なにより、それほど愛していた相手のことを、まるでロボットのメモリーから消去するかのようにあっさりと忘れてしまえるような人だったら、俺はたぶん、シモーヌのことをここまで愛していない。愛せていない。
だってそうだろう? 彼女がもしそんな人間だったらなら、何か都合が悪いことがあったらあっさり俺のことを忘れてしまえるかもしれないんだぞ? それはいくら何でも寂しいだろ。
彼女がレックスのことを忘れられないというのであれば、それだけ情の厚い人間だという証拠なんだよ。
忘れない上で、なるべくそれを口や態度に出さないようにしてくれている。加えて、溜息だってそんなに頻繁に漏らしているわけじゃない。その程度のことでしかない。
一分の隙もなく常に完璧でいられる人間なんていない。
その当たり前のことを忘れちゃいけないさ。
0
お気に入りに追加
194
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります
京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。
なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。
今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。
しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。
今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。
とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
母に理不尽に当たり散らされたことで家出した私は――見知らぬ世界に転移しました!?
四季
恋愛
幼い頃、同居していた祖母から言われたことがあった。
もしも嫌なことがあったなら、電話の下の棚から髪飾りを取り出して持っていって、近所の神社の鳥居を両足でくぐりなさい――。
◆
十七歳になった真琴は、ある日母に理不尽に当たり散らされたことで家出した。
彼女が向かったのは神社。
その鳥居をくぐると――?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる