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第四世代
シモーヌ編 生命維持装置
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「これは……どういうことだ……? 透明……? しかも私か……?」
高仁によって河から引き上げられた要救助者を見て、<レックスのコピー>は呟くように口にした。その様子に、
『彼にはもう記憶が戻ってるのか……?』
と察する。久利生も、救助された時には、少なくとも不定形生物に襲われた時のことまでは思い出していたみたいだからな。冷静になれると記憶が繋がるらしいと推測している。
だが、それについては後だ。今はとにかく<もう一人のレックスのコピー>の蘇生に全力を注ぐ。
アリアンに装備されていたAEDを用いて除細動を試みるが、最初の診断の時点ですでに、
「AEDを用いる必要はありません。胸骨圧迫を行い、医療機関への速やかな搬送を強く推奨します」
とのアナウンスが。AEDはあくまで<心室細動>や<心室頻拍>を取り除くための機械。もう完全に停止した心臓を再度動くようにするものじゃない。だから、心臓が完全に停止し<心静止>の状態になっていると、AEDを使っても無駄なんだそうだ。
こうなると、<治療用ナノマシン注射>と<胸骨圧迫によるポンプ機能の補助>が必要になる。胸骨圧迫は、俗にいう<心臓マッサージ>のことだな。両手で胸を強く押して、心臓の代わりに血液循環を促すあれだ。
治療用ナノマシン注射は、心筋の壊死を遅らせ、回復の可能性を高めるために行う。その上で、胸骨圧迫によって血液の循環を促し、医療機関での専門的な蘇生処置を受けられるまでの応急処置を行うわけだ。
と言っても、ここには医療機関はないから、<治療用カプセル>に収容するまでのそれではある。治療用カプセルには<人工心肺>としての機能もあり、これによって回復の可能性を残しつつ修復を行う感じか。
それと同時に、久利生もコーネリアス号に向かう。
「ビアンカ! 灯! ここを頼む!」
言いつつ久利生は、ローバーに乗り込んだ。<外科医>として対応するために。なお、コーネリアス号には桜華もいるので、<助手>については、桜華とドーベルマンDK-a及びドーベルマンMPMで間に合うから、ビアンカと灯には家族を守ってもらうということだな。
「はい、少佐!」
「おう! 任せろ!」
しっかりと返事をする二人に見送られ、久利生が運転するローバーが走り出す。
その頃、やはりコーネリアス号に急ぐアリアンの中では、高仁による胸骨圧迫が続けられていた。ホビットMk-Ⅱが簡易人工呼吸器を<もう一人のレックスのコピー>に装着、呼吸の補助を行っている。どちらもロボットなので人間のように休む必要がない。だから今は、高仁とホビットMk-Ⅱそのものが<生命維持装置>になってるわけだ。
高仁によって河から引き上げられた要救助者を見て、<レックスのコピー>は呟くように口にした。その様子に、
『彼にはもう記憶が戻ってるのか……?』
と察する。久利生も、救助された時には、少なくとも不定形生物に襲われた時のことまでは思い出していたみたいだからな。冷静になれると記憶が繋がるらしいと推測している。
だが、それについては後だ。今はとにかく<もう一人のレックスのコピー>の蘇生に全力を注ぐ。
アリアンに装備されていたAEDを用いて除細動を試みるが、最初の診断の時点ですでに、
「AEDを用いる必要はありません。胸骨圧迫を行い、医療機関への速やかな搬送を強く推奨します」
とのアナウンスが。AEDはあくまで<心室細動>や<心室頻拍>を取り除くための機械。もう完全に停止した心臓を再度動くようにするものじゃない。だから、心臓が完全に停止し<心静止>の状態になっていると、AEDを使っても無駄なんだそうだ。
こうなると、<治療用ナノマシン注射>と<胸骨圧迫によるポンプ機能の補助>が必要になる。胸骨圧迫は、俗にいう<心臓マッサージ>のことだな。両手で胸を強く押して、心臓の代わりに血液循環を促すあれだ。
治療用ナノマシン注射は、心筋の壊死を遅らせ、回復の可能性を高めるために行う。その上で、胸骨圧迫によって血液の循環を促し、医療機関での専門的な蘇生処置を受けられるまでの応急処置を行うわけだ。
と言っても、ここには医療機関はないから、<治療用カプセル>に収容するまでのそれではある。治療用カプセルには<人工心肺>としての機能もあり、これによって回復の可能性を残しつつ修復を行う感じか。
それと同時に、久利生もコーネリアス号に向かう。
「ビアンカ! 灯! ここを頼む!」
言いつつ久利生は、ローバーに乗り込んだ。<外科医>として対応するために。なお、コーネリアス号には桜華もいるので、<助手>については、桜華とドーベルマンDK-a及びドーベルマンMPMで間に合うから、ビアンカと灯には家族を守ってもらうということだな。
「はい、少佐!」
「おう! 任せろ!」
しっかりと返事をする二人に見送られ、久利生が運転するローバーが走り出す。
その頃、やはりコーネリアス号に急ぐアリアンの中では、高仁による胸骨圧迫が続けられていた。ホビットMk-Ⅱが簡易人工呼吸器を<もう一人のレックスのコピー>に装着、呼吸の補助を行っている。どちらもロボットなので人間のように休む必要がない。だから今は、高仁とホビットMk-Ⅱそのものが<生命維持装置>になってるわけだ。
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