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第四世代

シモーヌ編 思わぬ事態

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まだ雷は収まっていなかったが、アリアンを現場に急行させる。

「到着まで六百秒です」

アリアンがそう告げてきた。十分か……微妙なところだな、だが、その時、

「水面ニ、人影ヲ確認」

移動電源に乗っていたホビットMk-Ⅱが伝えてくる。実際にそれを捉えたのはドーベルマンMPM五十九号機だったが、ホビットMk-Ⅱが情報を受けて伝えてきたんだ。もちろん、五十九号機からもデータそのものは直接届く。

「くそっ! 立て続けかよ!」

俺は思わずそう唸っていた。が、泣き言を口にしても始まらん。

「五十九号機、ホビット、要救助者を救出!」

久利生くりうが咄嗟に命じたのを俺も追認する。五十九号機とホビットMk-Ⅱは雨の中に飛び出して、念のために積んであったレインポンチョを袋状にして浮き代わりにし、自身に括り付け、躊躇うことなく河に入って行く。

今回は三機だけだから援護はなしだ。そして、それなりの防水性能は確保してあるドーベルマンMPMである五十九号機は取り敢えず浸水は見られず、シオの救出の際のデータをフィードバックしてさらに防水性能を高めたホビットMk-Ⅱの方も、今のところは何とか大丈夫なようだ。

それでも、思わぬ事態に、俺達と同じようにタブレット越しにそれを見ていたシオは、こわばった表情をしていた。自分の時のことを思い出しているんだろう。そして同時に、今回の<誰か>が無事に救出されることを願っているんだと感じる。

ならば、その期待に応えてもらわなきゃな。この時のために改良を加えてきたんだ。

性能が上回っている五十九号機が先行し、ホビットMk-Ⅱも、引き離されつつもそれを追う。岸から約十メートルの距離。その河は、流れの部分だけでも幅が三十メートルくらいまで増水していて、五十九号機らからまだ近いところだったのは不幸中の幸いかもしれない。

加えて、雷が落ちたばかりだったことで、近くにクロコディアやアーマード・ピラルクのような捕食者がいたとしてもおそらく感電して命を落としたか動けなくなっていることだろう。この間に救出しなければ。

「到着まで三百秒」

アリアンからもそう報告がある。しかし、五十九号機がその人影に近付いた時、

「レックス!?」

シオが叫んだ。

「え!?」

遅れてハッとなったシモーヌが、

「確かにレックス……かも……!」

と口にする。状況が掴めずに軽くパニックを起こしていたらしいその人物は何とか落ち着きを取り戻し、岸に向かって泳ぎ出していたのだった。

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