1,691 / 2,648
第四世代
シモーヌ編 人間であることの根拠
しおりを挟む
新暦〇〇三六年四月二十七日
改めて言うが、地球人は長く、
『自分にとって都合の悪い相手は人間じゃない』
という甘えを捨てられずにいた。いや、実際には今なお捨てられていないだろうな。俺がまだ地球人社会にいた時にもそういうのは根強く残っていたし。
治療法もない難病に罹り怪物のように変化していく俺の妹<光莉>についても、
『そいつはもう人間じゃないから殺すべきだ!』
的なことを言う奴も実際にいたしな。
でもな。いくら、『人間に見えなくて』も、光莉は俺の血を分けた<妹>で、<人間>だったんだよ。意識も知能も失っても、人間だったんだ。だからこそ、亡くなってからも人間としてその尊厳が大切にされて、
『人間として送った』
んだ。決して『怪物の死体を処分した』んじゃない。そうだ。光莉も最後まで人間だった。<人間としての価値>が人間であることの根拠じゃない。
人間から人間として生まれた以上は人間なんだ。
だとすると、今は野生として生きているここの<獣人>達も、<人間>ということになるかもしれない。密から光が生まれたように、鷹から灯が生まれたように、純血のパパニアンから順が生まれたように、純血のマンティアンから玲が生まれたように。
だが同時に、野生で生きる獣人達には獣人達の生き方がある。となれば、ここでは特に、
『人間とは?』
という点について、慎重かつ柔軟な発想で臨まないといけないだろうな。それこそ、<知能>や<社会規範の理解度>なんかでは区別は付けられない。そんなことをしてたら、光や灯以外の俺の子供達は、
<人間にとって都合が悪ければ殺されたって仕方ない動物>
になってしまう。
そのようなことはまったくもって承諾できない。地球人が俺の子供達をそんな理由で殺そうとするなら、実力をもって対抗だってする。その覚悟はある。
<生存競争>
として、な。
だからこそ、もし、遠い未来に地球人がここに降り立つことがあっても穏当にこちらの在り方を伝えられるように、しっかりとした基準は作っておかないといけないだろう。かつての地球人のように人間同士でひたすら殺し合っているようでは、とても友好的な関係を築けるとは思ってもらえないだろうしな。
しかし同時に、
『人間を人間として扱う』
というのは、決して『お人好しになる』という意味じゃない。相手が自分にとって都合の悪い振る舞いをするかもしれない可能性についてもきちんと想定し、それに備えることも含めてのものなんだ。
それを忘れちゃ、話にならない。
改めて言うが、地球人は長く、
『自分にとって都合の悪い相手は人間じゃない』
という甘えを捨てられずにいた。いや、実際には今なお捨てられていないだろうな。俺がまだ地球人社会にいた時にもそういうのは根強く残っていたし。
治療法もない難病に罹り怪物のように変化していく俺の妹<光莉>についても、
『そいつはもう人間じゃないから殺すべきだ!』
的なことを言う奴も実際にいたしな。
でもな。いくら、『人間に見えなくて』も、光莉は俺の血を分けた<妹>で、<人間>だったんだよ。意識も知能も失っても、人間だったんだ。だからこそ、亡くなってからも人間としてその尊厳が大切にされて、
『人間として送った』
んだ。決して『怪物の死体を処分した』んじゃない。そうだ。光莉も最後まで人間だった。<人間としての価値>が人間であることの根拠じゃない。
人間から人間として生まれた以上は人間なんだ。
だとすると、今は野生として生きているここの<獣人>達も、<人間>ということになるかもしれない。密から光が生まれたように、鷹から灯が生まれたように、純血のパパニアンから順が生まれたように、純血のマンティアンから玲が生まれたように。
だが同時に、野生で生きる獣人達には獣人達の生き方がある。となれば、ここでは特に、
『人間とは?』
という点について、慎重かつ柔軟な発想で臨まないといけないだろうな。それこそ、<知能>や<社会規範の理解度>なんかでは区別は付けられない。そんなことをしてたら、光や灯以外の俺の子供達は、
<人間にとって都合が悪ければ殺されたって仕方ない動物>
になってしまう。
そのようなことはまったくもって承諾できない。地球人が俺の子供達をそんな理由で殺そうとするなら、実力をもって対抗だってする。その覚悟はある。
<生存競争>
として、な。
だからこそ、もし、遠い未来に地球人がここに降り立つことがあっても穏当にこちらの在り方を伝えられるように、しっかりとした基準は作っておかないといけないだろう。かつての地球人のように人間同士でひたすら殺し合っているようでは、とても友好的な関係を築けるとは思ってもらえないだろうしな。
しかし同時に、
『人間を人間として扱う』
というのは、決して『お人好しになる』という意味じゃない。相手が自分にとって都合の悪い振る舞いをするかもしれない可能性についてもきちんと想定し、それに備えることも含めてのものなんだ。
それを忘れちゃ、話にならない。
0
お気に入りに追加
193
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります
京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。
なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。
今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。
しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。
今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。
とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる