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第四世代

シモーヌ編 人間を人間として扱う

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新暦〇〇三六年四月二十六日



とまあ、子供達は皆元気だが、やはり揃いも揃って服は着ようとしてくれない。どうもやっぱり苦手なようだ。

ただ、成長に伴って必要性を感じてくれば着てくれるようになるだろうし、別にそこは気にしてない。

一方、コーネリアス号で一人で暮らしているシオの方は、相変わらず表面上は落ち着いた様子だった。内心については俺達には分からないものの、ファンデーションを塗るようになり、髪も染めて、見た目にはまさにシモーヌとほぼ同じになった。

俺達から提供された資料を熱心に読み込み、この世界を理解しようと努めてくれている。と同時に、プラントの整備もするようになった。仮にも俺達の食料を生産してる重要施設だから特にしっかり監視させてもらってるが、問題はなさそうだ。

人間というのは、頭では理性的であろうとしても、感情が抑えきれなくなることがあるからな。シオを人間として接するからこそそういう、

『魔が差す』

という時だってあるという前提を忘れない。<信頼>と<盲信>は別のものだ。それをわきまえないといけないだろう。

『人間を人間として扱う』

ってのは、相手を盲信することじゃないんだ。

『人間だからこそ失敗することもあるし過ちを犯すこともある』

のを認めなきゃいけないんだよ。

そんな彼女の傍には、桜華おうかとホビットMk-Ⅰの姿。プラントに植えられた野菜を収穫し、ホビットMk-Ⅰが手にしているカゴに入れていく。

「ありがとう」

「ヴァッ!」

なんてやり取りをしてるのも微笑ましい。そしてその光景を、桜華おうかが同じく収穫作業をしながら見守っている。

と、ビアンカから報告を受けた。

「彼女も少しずつ馴染んできているようだね」

「バイタルも安定してます」

久利生くりうとビアンカがそう告げるのを、

「そうか。よかった」

俺もホッとしながら聞く。彼女には幸せになってほしいと俺も思う。同じようにして顕現しながらも命を落としたであろう者達のためにも、な……

そして、シモーヌやビアンカや久利生くりうやシオと同じく顕現するであろう<コーネリアス号の乗員>達を可能な限り救助するために、本格的な体制作りを始めることにした。

ホビットMk-Ⅱの量産が始まった今こそそれを実現しなきゃいけない。

シオを救助する際に水没し流されたであろうホビットMk-Ⅱの捜索は今も続いている。これ自体、救出のためのシミュレーションにもなっている。現在、下流三キロまで範囲を広げて捜索中だ。普通に考えるとそこまで流されるようなものじゃないはずなんだが、もしかすると流木とかに引っ掛かってそのまま一緒に流された可能性もあると思うんだ。

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