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第四世代

シモーヌ編 五十四号機

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ところで、今回、ドーベルマンMPMが石炭を発見できた経緯に少し触れておこうか。

そのドーベルマンMPMは、<五十四号機>。と言っても、仕様は他と全く同じだから、個体識別にはあまり意味がない。たまたまだ。

で、五十四号機は、母艦ドローンが空から撮影した映像を光学処理して炭鉱がある可能性の高い地点に当たりをつけ、フライトユニットで派遣したわけだが、最初はコーネリアス号から約二百キロの地点だった。そこに一体で降り立ち、少し地面を掘ってみたがあったのは泥炭で、残念ながらハズレだった。

それからさらに母艦ドローンが周辺を探ったものの目ぼしい発見はなかったことで、移動を始める。

試掘用のスコップとツルハシを装備し、五十四号機は大自然の中を移動した。母艦ドローンを通じて送られてきた映像には、密林を抜け、川沿いを進み、標高差が精々数百メートル程度の山の獣道を突き進む様子も記録されていた。

川沿いを進んだことで途中、落差十メートルほどの滝に突き当たるも、人間と違ってそんなことで怯んだりもしない。二腕四脚というその構造を活かし、自身の重量を上手く分散させつつ危なげなく滝の脇の崖を登っていく。万が一転落して壊れても、位置はしっかり記録されているので、別途回収に向かえばいい。

しかしそんなこともなくあっさりと崖を踏破。さらに上流を目指す。

さすがに数百メートルと言えども登れば植生も変わり、まあまあ背の高い針葉樹林となっていた。せっかくなので、その中にあった倒木をやはり装備したナイフで削って調べると、密度が高く長い繊維が確認されて、結構な強度もあり、建材としての利用価値がありそうなそれだと確認できた。

なお、炭鉱の発見が第一目的ではあるものの、生物のサンプルの収集も目的の一つであり、サンプルを直径三ミリ長さ十ミリの小さな試験管に封入して本体に取り付けたケースにしまう。ここまでにも植物を中心にすでに百以上のサンプルが採取されていた。

また、動物も多数、小動物を中心に新種の可能性の高いものが発見されている。ただ同時に、<河>と呼べる規模の河川やある程度の大きさの池といった十分な水量がある水源から遠い場所では、<獣人>の姿はほとんど確認されなかった。これはやはり、あの<不定形生物>の生息域でないと、それが変化した生物が現れない可能性を示しているんだろうな。

実際、山に入ると、住んでいるのは明らかに昆虫と、鵺竜こうりゅうを祖先に持つと思われる動物ばかりだったんだ。

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