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第四世代

シモーヌ編 蒼穹

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こうして格闘すること八時間。

「生まれたよ。体重二八一〇グラム。元気な女の子だ」

日付が変わって、久利生くりうから連絡があった。

「おめでとう、あかり!」

「おめでとう。よく頑張ったな」

「えへへ♡」

声を掛けたシモーヌと俺に、あかりは汗だくの真っ赤な顔でVサインをしてみせた。その隣に、赤ん坊を抱いた久利生くりうの姿も。

さすがに夜中だったからルコアは未来みらいと一緒に寝てたし、ビアンカも黎明れいあを寝かしつけてそのまま眠ってしまっていたが、朝になったら賑やかなことになるだろうな。

「赤ん坊の名前はどうするの?」

尋ねるシモーヌに、

蒼穹そら。蒼穹って書いて蒼穹そらだよ」

あかりは笑顔で応える。

「なるほど、空を制したあかりらしいネーミングだ」

俺も感心した。

「よかった……本当によかった……あかり蒼穹そら……」

シモーヌは、娘と孫の無事を喜ぶ実の母親のように涙も浮かべてた。

すると、

「おめでとうございます」

俺達の耳に届く声。

シオだった。シオも今まで見守ってくれていたんだ。そんな彼女に、あかりは、

「私ね、ママの娘になれて幸せだったよ。血は繋がってなくても、瑠衣るいお姉ちゃんの妹でよかった……♡」

今まで瑠衣るいのことについては口にしたことのなかったあかりのその言葉に、俺も少し戸惑いつつも、それ自体は嘘というわけじゃないのは分かった。シモーヌが母親なら瑠衣るいは確かにあかりにとっては<お姉ちゃん>なんだ。瑠衣るいを生み、さらに実の母親であるようの代わりに自分を育ててくれてシモーヌへの尊敬の意味も込めて、そう言ったんだろうな。

そんなあかりに、シモーヌも、

「ううん。私の方こそ、あなたを育てられたことが嬉しかった。瑠衣るいが傍にいてくれてるみたいで」

涙声でそう告げる。

「……!」

あかりとシモーヌの言葉に、タブレットに映し出されたシオの表情がハッとなった。瑠衣るいのことが決して蔑ろにされていたわけじゃないことを改めて感じたのかもしれない。

そうだ。シモーヌは、レックスのことも瑠衣るいのことも忘れてなんかいないし、二人に対する気持ちを捨てたりなんかしていない。ただ二人がここにいないという現実を受け止めてるだけだ。

これをシオがどう感じたかは、俺達には分からない。彼女の気持ちはあくまで彼女自身のものだ。たとえ元同一人物であったシモーヌにさえ、分からないだろうなと思う。なにしろもう、二十数年間の差異が積み重なっているんだ。ほぼほぼ完全に別人になってると言ってもいいだろう。

シモーヌがもう事実上、<惑星探査チーム・コーネリアスの秋嶋あきしまシモーヌ>とは同姓同名の別人として生きているのと同じように、シオも同姓同名の別人として生きていくことになるだろう。その踏ん切りを付けられるためのきっかけになればと俺は思うよ。

でも、それ以上にまずは……

おめでとう、あかり蒼穹そら

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