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第四世代
シモーヌ編 こんな面白そうなこと
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その日はそのまま寝てしまったシオだったが、翌朝も、ベッドから体を起こすのもつらそうだった。
「私には錬是や光がいてくれたけど、走や凱達がいてくれたけど、今のシオにはいないからね。そうやって一人で耐えなきゃいけなかった時には絵本を読みまくったんだよ。そんな感じで絵本に没入することで切り替えてた。正直、絵本は必要だったかな……と思う」
シモーヌが言うから、
「そうか……」
俺としても申し訳ない気分になった。そこで、
「この際だから絵本を複製しよう」
光が持っている<シモーヌの絵本>をセシリアにデータとして取り込んでもらって、コーネリアス号のAIでデータ処理。さらに工作室で<絵本>として再構成し、
「シオ。複製品で悪いけど、絵本を用意したから」
ビアンカにそう言ってもらって、桜華が取り敢えず五冊をシオに手渡した。
それを受け取り、彼女は。
「……ありがとう……」
桜華に向けてそう言ってくれた。
ちなみに昨日の時点で高仁もロールアウトしたが、取り敢えずそれどころじゃなかったから挨拶は抜きにして、ドーベルマンMPMやホビットMk-Ⅰらと一緒になってコーネリアス号のメンテナンス作業に入ってもらった。
何度も言うように、人間と違ってロボットはそういう扱いに対しても不満を抱くことはない。ただ決められた役目を淡々と果たすだけだ。
一方、桜華は、シオのために食事を用意したり着替えを用意したりと、甲斐甲斐しく働いてくれた。同時に機能上に問題がないかを確認するが、さすがにこれまでの蓄積もあるからか、まったくだった。
そうして、でしゃばることなく、シオの身の回りの世話をする。
三日目。昨日は一日、シオは絵本を読み漁っていた。最初に渡した五冊だけでなく、彼女がそれを読んでいる間にさらに五冊。そしてさらに五冊と、夕方までに三十冊を用意させてもらった。これによって本棚の一段が埋まる。それが功を奏したのか、
「ん……なんか落ち着いた。ありがとう。錬是とシモーヌにもお礼を言っといてくれるかな。ビアンカ」
と口にしてくれた。
そして、
「ああ、そうだね! いつまでも落ち込んでたって始まらない! 興味深いことは山盛りだ! こんな面白そうなこと、楽しまなくちゃもったいないよね!」
と声を上げて、まずはデータの確認をする。そこからの集中力は大変なものだった。俺達がここまでで整理してきたそれを片っ端からチェックしていく。
それこそ、シモーヌが二十数年かけて理解してきたことを、一日で理解しようとでもするかのように。
でも、それが<秋嶋シモーヌ>なんだそうだ。
「私には錬是や光がいてくれたけど、走や凱達がいてくれたけど、今のシオにはいないからね。そうやって一人で耐えなきゃいけなかった時には絵本を読みまくったんだよ。そんな感じで絵本に没入することで切り替えてた。正直、絵本は必要だったかな……と思う」
シモーヌが言うから、
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でも、それが<秋嶋シモーヌ>なんだそうだ。
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