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第四世代

シモーヌ編 瑠衣

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『レックスのことは大切だけど、彼はここにはいないんだ……』

それが事実だった。それが大前提だった。正直なところ、それ以外はまあ、あくまで<補足>でしかないだろう。

確かに、シモーヌがこうして二人も顕現したように、待っていれば十枚とおまいアレクセイも顕現したかもしれない。それを待ってもよかったかもしれない。実際、シモーヌは口にした。

「私もね、最初の頃はレックスが現れてくれることを期待してたんだ……理論上は彼が現れる可能性は確かにある。数値上の確率は決してゼロじゃない。だから待った。二十年待った。だけど、彼は現れなかった……その二十年、私の傍にいてくれたのは、私を支えてくれたのは、錬是れんぜだったんだ。錬是れんぜは二十年の間、私の<良き隣人>でいてくれた。それに気付くと、もう、自分の気持ちにも区切りをつけるべきだと思ったんだよ……」

そう話す彼女を、シオは真っ直ぐに見つめていた。その彼女の表情にも、様々な感情がよぎるのが俺には分かってしまった。

「……」

何かを口にしようとして、でも飲み込んで、口にしようとしたことを自分の中で改めて咀嚼して、今の自分とは違う判断をした<二十数年後の自分>に届く言葉を紡ごうとしているんだろうなというのが察せられる。そして、

「……!」

何かに気付いたようにハッとなったのが分かった。いや、『思い出した』、か。その直後、

瑠衣るいに申し訳ないとは思わないの……?」

と、送り出すように丁寧にはっきりとそうシモーヌに告げた。その口ぶりに、

「思い出したの……? あの不定形生物の中でのこと……」

シモーヌも察したように問い返し、シオも頷く。

やっぱりか。あの不定形生物の中の世界で瑠衣るいを生み、十枚とおまいアレクセイと共に家族として過ごした時間を思い出したからこそ、瑠衣るいのことが口に出てしまったんだろう。それが今のシオの正直な気持ちだと伝わってくる。

だが、シモーヌは言うんだ。

「そうね。瑠衣るいには申し訳ない気持ちもある。だけどそれでもやっぱり、二十年という時間は大きかったかな。だって、私にとっての瑠衣るいはもう、二十代の立派な<大人>だから……」

「……!」

ああそうだ。シオにとっての瑠衣るいはまだ幼い子供かもしれないが、シモーヌにとっての瑠衣るいは、俺との結婚を決意した時点でもう二十代半ばになってる感覚なんだ。自分のことを自分で決められる、自分の人生を自分で生きられる。

まあ実際には、地球人社会においては三十までは子供みたいな感覚ではあったものの、法律上は一応、<成人>ではある。シモーヌは少なくともそれまでは待ったんだよ。

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