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第四世代

玲編 初期ロット

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新暦〇〇三六年二月三十日



今日は二月三十日。<地球>では二月は二十八日までしかないが、一年の長さが惑星によって違うので、当然、一ヶ月の長さもそれぞれ違ってくる。だから細かい差異は気にしても仕方ないため、今では誰もそんなことは気にしない。

と、それはさて置き、<工場>では三機目のホビットMk-Ⅱが完成した。この調子で、一日一機のペースで製造していくことになると思う。急げば一日二機程度まではペースを上げることもできるものの、そこまで急ぐ必要もないしな。

ただ、なぜか、発声機能を持たせたのに、

「ヴァッ!」

としか話せない。どうやら搭載されたAIと発声装置との連携が上手くいっていないようだ。というのも、発声装置そのものには小型かつ簡易な<純朋群ほうむ製AI>が搭載されてて、どうもコーネリアス号に備蓄された部品を使って組み上げたAIとの間で何らかの齟齬が生じてるみたいなんだ。

でもまあ、<初期ロット>だし、この種の細かい不具合はあって当然か。それにどちらも経験を積むことで自ら補正していける成長型のAIだから、しばらく様子を見てみるさ。

加えて、ロボット同士の通信には何の問題も出てない。これは機体を制御してるAI同士で直接通信してるわけで当たり前なんだろうが、おかげで目立った齟齬は生じてない。あくまで人間と会話するというのが今のところ出来ないってだけだ。

「でも、今のままでも可愛いじゃん♡」

とは、あかりの弁。

確かにそうだな。

そんなわけでホビットMk-Ⅱが今後は主流になっていくだろう。単機での戦闘力はドーベルマンMPMよりも非力でも、生産性を最優先に設計したドーベルマンMPMよりもさらに高い生産性を確保したホビットMk-Ⅱは、材料の心配もなく数を揃えることができるわけだから、生身の人間を雇ってるようなものだと考えればやりようもあるさ。

部品の劣化という点でも、千年単位の耐久性を持つコーネリアス号の部材を流用したドーベルマンMPMよりはるかに速いものの、それはどんどん新しいものを作って交換していけば済む話だ。そのために整備性も考慮した設計にもしてあるわけで。

工場の周りで、ドーベルマンMPMに混じって様々な作業を行ってるホビットMk-Ⅱも、実に勤勉に働いてくれてる。新しいダミー集落を作ってるホビットMk-Ⅱとも合わせて、確実なマンパワーとしての機能は果たしてくれそうだ。

れいあかりの子供達を迎えても、人手不足で困ることもないだろう。

「頼むぞ、ホビットMk-Ⅱ」

「ヴァッ!」

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