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第四世代
玲編 鼓動
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新暦〇〇三五年十一月二日
灯が妊娠し、そして玲のお腹の中の胎児の鼓動を、エレクシアが捉えた。
「正常な心拍だと推定されます。順調でしょう」
とのことだった。
灯の方も、
「<悪阻>ってのが来るかと覚悟してんだけど、なんか、ぜんぜんないね」
とケロリとした様子。それに対して、ビアンカは、
「悪阻はすごく軽い人もいるから。羨ましい」
苦笑い。
「そういや、黎明の時は大変だったね」
灯が言うように、黎明を妊娠した時のビアンカの悪阻はかなり厳しいものだった。傍で見ててもつらくなるくらいに。それに比べて灯は本当に平然としている。
もしかすると、ビアンカの場合は、アラニーズでありながら地球人のようにも見える部分で妊娠したことで余計にきつかったのかもしれない。実際、自家受精でケイン達を宿した時には平然としていたしな。
この辺りもそれぞれ事情が違うので、一律に『こうなる』というのがないと改めて思い知らされるな。
玲も、これといって悪阻のようなものは見えないし。まあ、野生動物の場合は弱ってると見抜かれると命に係わるというのもあるのかもしれないが。
とにかく、灯も玲も順調なのはいいことだ。
その一方で、明に残された時間は確実に減っていってるのがひしひしと伝わってくる。
正直、かつての雄姿が見る影もない。外見上はそれほど変化してるようにも見えないにも拘らず、『おばあちゃん』感がすごくするようになった気が。
むしろ刃の時よりもずっと<老い>を感じさせるな。この辺りも、角を喪った影響が出てるのかもしれない。
ただ同時に、『穏やか』なのも確かなんだ。穏やかな時間を過ごしてるんだというのを感じる。
すると、この日、いつものように絵本の読み聞かせが終わって明が自身の住処へ帰ろうとすると、
「……」
玲がその後を追うようにして密林の中へ入っていった。そして鋭も、そんな玲を追うようにして続く。
その様子を見て俺も何となく予感めいたものがあり、
「玖号機、拾弐号機、玲と鋭の護衛を頼む」
と指示を出した。それを受けて、哨戒中だった玖号機と拾弐号機が、二人の信号を追う。家族には皆、俺も含めて、万が一に備えてチップを付けさせてもらってるからな。
あまり近付き過ぎず、しかしすぐに駆け付けられる距離を保ちつつ警護を行う。
明は、途中で狩りをしつつもほぼ真っ直ぐ寝床に向かってた。玲と鋭も、そんな明とつかず離れず、後をついて行ってる。
何が目的なのかは分からない。でも、不穏な空気は感じない。
だがその時、
「マスター、龍準が接近しています」
エレクシアがそう告げたのだった。
灯が妊娠し、そして玲のお腹の中の胎児の鼓動を、エレクシアが捉えた。
「正常な心拍だと推定されます。順調でしょう」
とのことだった。
灯の方も、
「<悪阻>ってのが来るかと覚悟してんだけど、なんか、ぜんぜんないね」
とケロリとした様子。それに対して、ビアンカは、
「悪阻はすごく軽い人もいるから。羨ましい」
苦笑い。
「そういや、黎明の時は大変だったね」
灯が言うように、黎明を妊娠した時のビアンカの悪阻はかなり厳しいものだった。傍で見ててもつらくなるくらいに。それに比べて灯は本当に平然としている。
もしかすると、ビアンカの場合は、アラニーズでありながら地球人のようにも見える部分で妊娠したことで余計にきつかったのかもしれない。実際、自家受精でケイン達を宿した時には平然としていたしな。
この辺りもそれぞれ事情が違うので、一律に『こうなる』というのがないと改めて思い知らされるな。
玲も、これといって悪阻のようなものは見えないし。まあ、野生動物の場合は弱ってると見抜かれると命に係わるというのもあるのかもしれないが。
とにかく、灯も玲も順調なのはいいことだ。
その一方で、明に残された時間は確実に減っていってるのがひしひしと伝わってくる。
正直、かつての雄姿が見る影もない。外見上はそれほど変化してるようにも見えないにも拘らず、『おばあちゃん』感がすごくするようになった気が。
むしろ刃の時よりもずっと<老い>を感じさせるな。この辺りも、角を喪った影響が出てるのかもしれない。
ただ同時に、『穏やか』なのも確かなんだ。穏やかな時間を過ごしてるんだというのを感じる。
すると、この日、いつものように絵本の読み聞かせが終わって明が自身の住処へ帰ろうとすると、
「……」
玲がその後を追うようにして密林の中へ入っていった。そして鋭も、そんな玲を追うようにして続く。
その様子を見て俺も何となく予感めいたものがあり、
「玖号機、拾弐号機、玲と鋭の護衛を頼む」
と指示を出した。それを受けて、哨戒中だった玖号機と拾弐号機が、二人の信号を追う。家族には皆、俺も含めて、万が一に備えてチップを付けさせてもらってるからな。
あまり近付き過ぎず、しかしすぐに駆け付けられる距離を保ちつつ警護を行う。
明は、途中で狩りをしつつもほぼ真っ直ぐ寝床に向かってた。玲と鋭も、そんな明とつかず離れず、後をついて行ってる。
何が目的なのかは分からない。でも、不穏な空気は感じない。
だがその時、
「マスター、龍準が接近しています」
エレクシアがそう告げたのだった。
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