未開の惑星に不時着したけど帰れそうにないので人外ハーレムを目指してみます(Ver.02)

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
1,600 / 2,645
第四世代

玲編 他の誰かが

しおりを挟む
ボクサー竜ボクサーは木に登れない。ゆえに樹上に逃れれば追っては来ない』

その<常識>を覆す駿しゅんの技に、さしもの龍準りゅうじゅんも驚いた様子だった。ただ、三メートルほど跳び上がってみせたところで、足場として木の幹を捉えきれず、駿しゅんは枝に何度も引っ掛かりながら地上へと落ちた。

けれど、そうやって龍準りゅうじゅんを戸惑わせたことで、ドーベルマンDK-aきゅう号機と拾弐じゅうに号機が間に合った。

樹上での戦闘は無理でも、飛び掛かるくらいはできる。

「!?」

思いがけない<連携>に、龍準りゅうじゅんはうっかり鎌を緩めてしまった。老いたりとはいえ、ごうも歴戦の猛者。その隙を見逃すことはなかった。

「ガアッ!!」

力の限り暴れ、龍準りゅうじゅんの鎌の棘で肉を切り裂かれながらも脱出。地上へと落ちた。途中で木の枝に引っ掛かりつつ。

そんなごう龍準りゅうじゅんが追おうとするものの、きゅう号機と拾弐じゅうに号機も地上に降りて迎え撃つ。

地上に下りさえすれば性能をフルに発揮できる。おそらく一機では厳しいが、二機が連携すれば、ごう駿しゅんが逃げる程度の時間は稼げるだろう。

と、それ以前に、龍準りゅうじゅんは見切りをつけたのか、茂みに姿を消し、遠ざかっていった。

こうしてごうはかろうじて命を取り留めた。とは言え、今回のことで改めてごうの衰えがはっきりしてしまったのも事実だろうな。

普通のボクサー竜ボクサーではマンティアンにはまったく敵わない。それに対してごうは、ボクサー竜ボクサーとしては規格外の強さを持っていた。マンティアン相手でも一撃でやられてしまったりはしない程度には。

確かに龍準りゅうじゅんは、父親だと目されている龍然りゅうぜんには明らかに届かないとはいえ、並のマンティアンよりも数段上の強さを持っている。だからごうが敵わなくても当然なんだろうが、それにしてもロクな抵抗もできなかったというのは、彼の衰えを何よりも物語っていただろう。

ごうの命も、尽きようとしているんだ。

「ルルルルル……」

駿しゅんも、それを悟っているのかもしれない。以前は何かとごうに突っかかっていった駿しゅんだったが、最近ではそういう姿が見られなくなっていた。彼が自分より弱くなってしまったことを察したのだろうか。

龍準りゅうじゅんのこともありやや足を引きずるような歩き方をするごうに寄り添うようにして一緒に歩き、群れに戻る。

美しい<夫婦の姿>にも思える光景だが、しかし同時に、この裏では、ごうの代わりに龍準りゅうじゅんの餌となったものもいたのは事実だろう。そんな犠牲があればこそ、今回ではごうは命を落とさなかった。

これもまた、<生きる>ということだ。直接命をいただくわけではなくとも、自分の代わりに他の誰かが命を落とすことで自らの命を長らえる。

この<エゴ>を俺は忘れないでいなくちゃと思ってる。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

学園長からのお話です

ラララキヲ
ファンタジー
 学園長の声が学園に響く。 『昨日、平民の女生徒の食べていたお菓子を高位貴族の令息5人が取り囲んで奪うという事がありました』  昨日ピンク髪の女生徒からクッキーを貰った自覚のある王太子とその側近4人は項垂れながらその声を聴いていた。  学園長の話はまだまだ続く…… ◇テンプレ乙女ゲームになりそうな登場人物(しかし出てこない) ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

処理中です...