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第四世代

玲編 傍観者

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新暦〇〇三五年十月五日



こうして今なお<孫>が生まれたりしつつ、俺は自分の家族を見守っていた。いや、今の俺はほぼ<傍観者>だから、

『見届けようとしていた』

と言った方がいいかもしれない。実際に対処しているのはほとんど当人達だ。俺はただ<群れのボス>にして<唯一の地球人>であるがゆえの役目を果たしてるだけに過ぎない。

そうだ。俺がこうして綴っているこれも、<俺の物語>じゃなくなっている。それこそただの<記録>であり<日記>なんだ。

家族についての。

ここまでずっと夢中でやってきたが、最近ようやく、冷静に客観的にいろんなことが見られるようになってきた気もする。俺が俺自身に対してあれこれ言い聞かせなくても、ひかりあかりは自分で考えて対処してくれてる。それが頼もしい。

シモーヌやビアンカや久利生くりうは、元々俺より優秀な人間達だから、今の自分を受け入れることさえできたなら何も心配していない。

<オリジナルと同じ記憶を有しているだけの別人>

であることを受け止め、ただシモーヌとしてビアンカとして久利生くりうとして生きていけてるなら、俺があれこれ言う必要もないさ。

むしろ俺が、シモーヌ達から学んで、ここに築かれていくであろう社会の基盤について考えているだけだ。

加えて、エレクシア達が持っている地球人の歴史についてのデータについても検証して。

そういう<実例>が無数にあるんだからそれを参考にして活かしていかないでどうすんだ?って話だろ?

じゃなきゃ、何のために無駄に大きな脳を獲得したんだ。地球人は。『考えるため』だろう?

考えることもなくその場の感情や思い付きだけで何もかも対処できるなら、地球人の歴史はあんなに血生臭いものになってるわけないじゃないか。

先人達のそういう失敗から学ばなくて何が<人間>だ。

だから、れいに対しても、しっかりと彼女の様子を見定めて対処していくさ。

<地球人の姿をしたマンティアンの妊娠・出産>

についてな。

で、一昨日昨日とえいの部屋にこもっていたれいが、今日はまためいえいと一緒に、ひかりによる絵本の読み聞かせに参加してくれてた。

表情もバイタルサインも、特に問題ないようだ。胎児の心音はまだ捉えられないが、何らかの問題の予兆も検出できていない。おおむね順調と現時点では判断できるだろう。

めいの孫でありえいの子であるその子のことを心待ちにしつつ、れん楼羅ろうらのような事例もあるからな。そういう部分についてもしっかりと覚悟を持っておかなきゃいけないと思う。

命ってのは、奇跡のようなバランスの上に成り立っているんだ。

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