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第四世代

玲編 游煉

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新暦〇〇三五年十月三日



妊娠の兆候が見られるれいは、今日、めいひかりに絵本を読んでもらうために現れても、えいの部屋から出てこなかった。そういう気分になれなかったんだろう。

なので今日のところは、めいえいだけが絵本を読み聞かせてもらうことになった。

ただ、

「……?」

れいの姿が見えないことに、めいが少し周囲を窺うような仕草を見せた。れいの姿を探しているのかもしれない。

別にれいのことが好きとかそういうんじゃないとは思う。単にいつもと状況が違うのが気になっているだけだろう。実際、しばらく周囲を窺った後、落ち着いたのかひかりが読んでくれる絵本に意識を向けてくれた。

その仕草がまた子供っぽくてな。見た目そのものは年齢を感じさせるものではありつつ、幼さも感じさせるんだ。それは、認知症を患ったひそかにも見られた様子だ。

とは言え、めいにはまだ明確な認知症の様子は窺えない。その点では幸いである。

こうしてめいが穏やかに日常を過ごしている一方で、じょうの方にも変化があった。じょうのパートナーのゆうが、二人目の子供を出産したんだ。

一人目の子供であるりくには独特のみぞれを思わせる水玉模様が体に浮かび上がってたが、それ以外は特に問題なく順調に成長し、普通にマンティアンとして暮らしている。巣立ちも近いらしく、巣立ち寸前だった時のせいと同じく、最近はずっと一人で過ごしている。縄張りは、じょうゆうのそれに隣接した辺りになるだろう。その辺りもちょうど空白地帯だったんだ。

ドーベルマンDK-aで哨戒を行ってたからだろうが。

そうしてりくが巣立ち寸前だったことで、じょうゆうも二人目を作ったってことだろうな。

ただ、じょうは、早々にかくと番っためいと違って長く一人だったことで、りくが生まれた時にはもう結構な歳だった。地球人で言えば立派な<中年>だった。野生の動物は地球人と違って年齢なんかさほど重視しないが、それでもいろいろリスクはあるだろうからな。二人目三人目ができる前に命が尽きることだって有り得る。

それがこうして二人目ができたんだ。めでたいことだよ。

で、じょうゆうの第二子は、

游煉ゆうれん

と名付けた。雌だったからだ。りくのような目立った特徴のない、ごく普通のマンティアンだ。

父親のじょうも、マンティアンとしては柔和な性格ではありつつその暮らしぶりはものすごく淡々とした普通のマンティアンのそれで、本当にこれまで特に触れなきゃいけないことがほとんどなかった。正直、游煉ゆうれんのことがなければそれこそちらっと触れるだけだっただろう。

家族が多いと、こういうこともあるよな。

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