1,581 / 2,554
第四世代
玲編 攻防
しおりを挟む
<必殺の一撃>で猪竜を仕留めきれなかった素戔嗚だったものの、本人に焦ったような様子はなかった。そもそも仕留められた手応えがなかったからかもしれない。
態勢を整え、突進してくる猪竜を紙一重で躱しつつ、横腹に蹴り。これも、分厚い皮下脂肪に阻まれてダメージが通らない。だが素戔嗚も怯まない。
今の自分の体格ではおそらく蹴り以外は十分なダメージにならないと理解してるんだろう。徹底して蹴りを繰り出す。
たとえ成体のレオンでさえ、この巨体が相手だと、牙も爪も急所には届かないだろうな。首筋に食らい付いても、脛骨を噛み砕くのは難しいかもしれない。皮下脂肪の層が分厚過ぎるんだ。
地球人は<脂肪>ってもんを毛嫌いする傾向にあるが、野生においてそれは自身を守る<鎧>になってる場合も多い。この猪竜を見てれば皮下脂肪のありがたさがよく分かる。とにかく攻撃が届かないんだ。結局は捉え方の問題か。
だがそんな話、素戔嗚には関係ないようだ。彼は今度は、目を狙い始めた。目を潰せば、攻撃の狙いがつけにくくなる。それは素戔嗚にとっては攻撃を躱しやすくなることでもあり、安全に一方的に攻撃を当てられるようになるということだ。
真っ向からブッ倒すことが難しいとなれば、搦め手も使う。<正々堂々>なんてものには拘らない。余計な手出しはされたくないようだが、だからといって、
『真っ向勝負でないとダメ』
とも思ってないということだな。単純に自分の手で倒したいだけか。
さりとて、相手もこの目立つ巨体でここまで生き延びてきた個体だ。一筋縄ではいかん。
「ブガアッ!!」
凶悪な声を上げながら、その巨体に似合わぬステップワークで自在に軌道を変えながら突っ込んでくる。しかも頭を不規則に振り、目への攻撃の狙いを付けさせない。そうだ、何度も言うが、猪竜は鈍重な獣じゃない。普通の地球人じゃ追いつけないフットワークの軽さも持っている。
けれど、身のこなしなら素戔嗚の方がはるかに上だった。ドーベルマンMPMの変幻自在な動きを学んだ素戔嗚は、手も足もほとんど違いなく使えて、相手に予測させない動きをする。そして、猪竜の背に飛び乗って首に腕を回して締め上げようとした。
「ブガッ!! ブゴアアッ!!」
猪竜はそんな素戔嗚を振り落とそうと猛烈にデタラメに体を回転させ始める。素戔嗚も振り落とされまいと、腕を首に巻き付け、足は猪竜の胴を締め付けて、離さない。
本当は目を狙いたかったのかもしれないが、目を狙うために腕をほどけばその瞬間に振り落とされそうだ。
態勢を整え、突進してくる猪竜を紙一重で躱しつつ、横腹に蹴り。これも、分厚い皮下脂肪に阻まれてダメージが通らない。だが素戔嗚も怯まない。
今の自分の体格ではおそらく蹴り以外は十分なダメージにならないと理解してるんだろう。徹底して蹴りを繰り出す。
たとえ成体のレオンでさえ、この巨体が相手だと、牙も爪も急所には届かないだろうな。首筋に食らい付いても、脛骨を噛み砕くのは難しいかもしれない。皮下脂肪の層が分厚過ぎるんだ。
地球人は<脂肪>ってもんを毛嫌いする傾向にあるが、野生においてそれは自身を守る<鎧>になってる場合も多い。この猪竜を見てれば皮下脂肪のありがたさがよく分かる。とにかく攻撃が届かないんだ。結局は捉え方の問題か。
だがそんな話、素戔嗚には関係ないようだ。彼は今度は、目を狙い始めた。目を潰せば、攻撃の狙いがつけにくくなる。それは素戔嗚にとっては攻撃を躱しやすくなることでもあり、安全に一方的に攻撃を当てられるようになるということだ。
真っ向からブッ倒すことが難しいとなれば、搦め手も使う。<正々堂々>なんてものには拘らない。余計な手出しはされたくないようだが、だからといって、
『真っ向勝負でないとダメ』
とも思ってないということだな。単純に自分の手で倒したいだけか。
さりとて、相手もこの目立つ巨体でここまで生き延びてきた個体だ。一筋縄ではいかん。
「ブガアッ!!」
凶悪な声を上げながら、その巨体に似合わぬステップワークで自在に軌道を変えながら突っ込んでくる。しかも頭を不規則に振り、目への攻撃の狙いを付けさせない。そうだ、何度も言うが、猪竜は鈍重な獣じゃない。普通の地球人じゃ追いつけないフットワークの軽さも持っている。
けれど、身のこなしなら素戔嗚の方がはるかに上だった。ドーベルマンMPMの変幻自在な動きを学んだ素戔嗚は、手も足もほとんど違いなく使えて、相手に予測させない動きをする。そして、猪竜の背に飛び乗って首に腕を回して締め上げようとした。
「ブガッ!! ブゴアアッ!!」
猪竜はそんな素戔嗚を振り落とそうと猛烈にデタラメに体を回転させ始める。素戔嗚も振り落とされまいと、腕を首に巻き付け、足は猪竜の胴を締め付けて、離さない。
本当は目を狙いたかったのかもしれないが、目を狙うために腕をほどけばその瞬間に振り落とされそうだ。
0
お気に入りに追加
174
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について
ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに……
しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。
NTRは始まりでしか、なかったのだ……
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
性奴隷を飼ったのに
お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。
異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。
異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。
自分の領地では奴隷は禁止していた。
奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。
そして1人の奴隷少女と出会った。
彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。
彼女は幼いエルフだった。
それに魔力が使えないように処理されていた。
そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。
でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。
俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。
孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。
エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。
※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。
※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。
俺のセフレが義妹になった。そのあと毎日めちゃくちゃシた。
ねんごろ
恋愛
主人公のセフレがどういうわけか義妹になって家にやってきた。
その日を境に彼らの関係性はより深く親密になっていって……
毎日にエロがある、そんな時間を二人は過ごしていく。
※他サイトで連載していた作品です
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる