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第四世代

玲編 生き延びた奴が勝者

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新暦〇〇三五年九月二十四日



今日もまた、めいひかりに絵本を読んでもらいに来ている。そしてれいえいも、一緒にいる。

その光景を見ているだけでも、俺はホッとする。今のところはまだ、めいも大丈夫なんだと感じて、

一方、ビクキアテグ村では、ケインとイザベラとキャサリンも順調に育っていた。ヒト蜘蛛アラクネの子供は、獣人達よりもさらに成長が早いが、どうやらケイン達もほぼそれと同等の成長ぶりを見せている。卵から孵ってからでも約四ヶ月でありつつ、<人間のようにも見える部分>の姿はすでに地球人なら二歳くらいに見える感じだろうか。

黎明れいあとそう変わらないくらいということだ。

しかも、イザベラは、未来みらいに対してやたらと挑発的に振る舞うようになってきてる。

ただ、未来みらいの方はあまり相手にしてないようだが。

地球人の子供と比べるとだいたい五歳くらいに見えるようになった未来みらいは、まだはっきりとした言葉はしゃべらないものの、こちらの言ってることはかなり理解してきているらしい。そして、以前よりは、少し、本当に少しだが、落ち着いてきてるようだ。だからか、イザベラの挑発には応じない。

「……」

自分の前で体を左右に揺らしながら飛び掛かるタイミングを計っているかのような彼女の様子についても、黙って見ているだけだった。

イザベラの方も、たぶん、本気で勝負を挑んでるわけじゃなく、狩りの練習をしてるだけだろう。獲物に飛び掛かるタイミングを、未来みらいを<仮想獲物>に見立てて計ってるんだろうと思われる。自分に対して襲い掛かってくる様子を見せない未来みらいが、ちょうどいい相手なのかもな。

いずれはさらに次の段階に進んで本当に飛び掛かったりするようになるかもしれないが、怪我をするようなそれの場合には、テレジアかモニカをはじめとした誰かが止めることになっている。

狩りの練習は必要なものの、命に係わるような大きな怪我はする必要はない。人間として生きるならな。

<経験>というやつは、生きていてこそ役に立つものだ。死んだら何の意味もないんだよ。

『その程度で死ぬようならそもそも生き残れない』

などと、地球人の中にはそんなことを言う奴もいたが、実際に自然の中で野生として生きたこともない、野生として生きている動物と何年も共に生きたこともないようなのが、そんなことを言っても陳腐なだけだ。

高い能力を持っているものであっても、ちょっとした巡り合わせの妙で簡単に命を落とすこともある。それが自然であり野生なんだ。強い奴が生き延びるとは限らない。生き延びた奴が勝者というだけなんだよ。

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