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第四世代
玲編 漁夫の利
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空は飛べなくても、空中で自在に姿勢を変えたり軌道を変えたりできるというのは。戦いの上ではかなりのアドバンテージだろう。
とは言え、蹴りを躱された龍準とて驚いてばかりじゃない。蹴りを繰り出した勢いでさらに体を回転させ、続けて回し蹴りを繰り出す。<昆虫型の獣>はそれも躱すが、龍準の猛攻は止まらない。回し蹴りを放った脚を地面に着けた途端に今度は体ごと頭から突っ込んで行く。
頭突きだ。これもまともに食らえば一撃で勝負が決まることさえあるとんでもない攻撃である。
なのにそれさえ<昆虫型の獣>は空中で姿勢を変えて躱してみせる。
が、これは龍準のフェイクだったようだ。頭突きが空振りした瞬間に体をひねって脚を跳ね上げ、いわゆる<胴回し回転蹴り>のような形で追撃を加えたんだ。
正直、空中にいる相手へのそれだったからどこまで威力が見込めたかは疑問なものの、<昆虫型の獣>の体をボールのように弾き飛ばすことには成功した。
しかも龍準はそんな不安定な姿勢にも拘らず蹴り脚を地面に着けてさらにもう一発、上から叩き付ける形で<胴回し回転蹴り>を連発してみせた。
龍然には劣るとしても、とんでもない身体能力であることは疑う余地もない。
そしてついに、<昆虫型の獣>を地面に叩きつけることに成功した。
なのに<昆虫型の獣>の方も、脚を体に引き寄せて丸まって、地面を転がり衝撃を逃がしたようだ。
いやはやどっちもすさまじいな。
<昆虫型の獣>は、ここまで見ている限りでは、牙斬のような<怪物>ではないようだ。それに、もし蛟や嶽や夷嶽や牙斬のような怪物なんだとしても、人間じゃない相手に倒される分にはさらに強力になるわけじゃなさそうだから、本音を言うと龍準に倒してもらってほしい気もする。
もちろんそれがこっちのエゴだというのは分かってるものの、偽らざる気持ちなのも事実なんだ。
だがこちらの思惑は別として、普通に目が離せない勝負ではある。
地面を転がる<昆虫型の獣>を追い、龍準は、サッカーのボールを蹴るようにしてさらに脚を繰り出す。
が、これは、不規則に跳ねる<昆虫型の獣>の体を捉えきれず空振り、態勢を整える隙を与えてしまった。
木の幹に飛びついて姿勢を正した<昆虫型の獣>は幹を駆け上り、距離を取ろうとした。逃げるつもりだろう。だがその時、思いがけない方向から攻撃が繰り出された。
木の幹を駆け上がったところに鋭い爪を備えた脚が襲い掛かり、<昆虫型の獣>の体を捉えて胸と胴の間を捉えて、一瞬で引きちぎってしまったのである。
アクシーズだ。俺達とは基本的に関わりのない野生のアクシーズが、<漁夫の利>とばかりに参戦したのだった。
とは言え、蹴りを躱された龍準とて驚いてばかりじゃない。蹴りを繰り出した勢いでさらに体を回転させ、続けて回し蹴りを繰り出す。<昆虫型の獣>はそれも躱すが、龍準の猛攻は止まらない。回し蹴りを放った脚を地面に着けた途端に今度は体ごと頭から突っ込んで行く。
頭突きだ。これもまともに食らえば一撃で勝負が決まることさえあるとんでもない攻撃である。
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が、これは龍準のフェイクだったようだ。頭突きが空振りした瞬間に体をひねって脚を跳ね上げ、いわゆる<胴回し回転蹴り>のような形で追撃を加えたんだ。
正直、空中にいる相手へのそれだったからどこまで威力が見込めたかは疑問なものの、<昆虫型の獣>の体をボールのように弾き飛ばすことには成功した。
しかも龍準はそんな不安定な姿勢にも拘らず蹴り脚を地面に着けてさらにもう一発、上から叩き付ける形で<胴回し回転蹴り>を連発してみせた。
龍然には劣るとしても、とんでもない身体能力であることは疑う余地もない。
そしてついに、<昆虫型の獣>を地面に叩きつけることに成功した。
なのに<昆虫型の獣>の方も、脚を体に引き寄せて丸まって、地面を転がり衝撃を逃がしたようだ。
いやはやどっちもすさまじいな。
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もちろんそれがこっちのエゴだというのは分かってるものの、偽らざる気持ちなのも事実なんだ。
だがこちらの思惑は別として、普通に目が離せない勝負ではある。
地面を転がる<昆虫型の獣>を追い、龍準は、サッカーのボールを蹴るようにしてさらに脚を繰り出す。
が、これは、不規則に跳ねる<昆虫型の獣>の体を捉えきれず空振り、態勢を整える隙を与えてしまった。
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木の幹を駆け上がったところに鋭い爪を備えた脚が襲い掛かり、<昆虫型の獣>の体を捉えて胸と胴の間を捉えて、一瞬で引きちぎってしまったのである。
アクシーズだ。俺達とは基本的に関わりのない野生のアクシーズが、<漁夫の利>とばかりに参戦したのだった。
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