上 下
1,563 / 2,381
第四世代

玲編 メイフェア

しおりを挟む
ほまれ達の縄張りに進入した龍準りゅうじゅんの前に、メイフェアは立ちはだかった。メンテナンス用ナノマシンを節約するために一ヶ月に一回程度に抑えているとはいえメンテナンスを欠かさずに行っている彼女の調子は万全だ。

「戦闘モード」

「戦闘モード。了解いたしました」

これにより全力稼働が可能になった彼女には、それこそ<不定形生物由来の怪物>くらいでないと対抗できない。牙斬がざんのような、な。

龍然りゅうぜんでさえ、エレクシアには手も足も出なかったんだ。そうなれば、当然のこととして、龍準りゅうじゅんではメイフェアには敵わない。

はずだ。

とは言え、牙斬がざんのような例が出てしまったからには、<絶対>は有り得ない。<不定形生物が変化した怪物>だけでなく、それ以外でも……

などと思うんだが、まあ結論から言えばそれは杞憂だった。

龍準りゅうじゅんからは仕掛けてこなかったことで、メイフェアが先に仕掛けた。攻撃したわけじゃないが、一気に間合いを詰めたのに反応して、龍準りゅうじゅんは両手のカマを突き出してきた。

こうやって反応できたこと自体がもうすでにすごいにせよ、それでも普通の生物の限界はそんなもんだよなという印象でもある。

突き出されたカマをメイフェアは右手だけで弾いて捌き、そのまま右手で龍準りゅうじゅんの首を捉えて、<喉輪のどわ>。

「ギッ……!」

その衝撃に龍準りゅうじゅんが明らかに怯む。それでも攻撃性は収まらず、反射的に右脚を跳ね上げてメイフェアの腹を狙う。

しかしそんなものは彼女には通じない。左手で受け止められ押し退けられ、逆にメイフェアが右回し蹴り。

龍準りゅうじゅんでは反応できない速度で。

十分に手加減はしているものの、ヘルメットを被っているかのような頭が爆発したかのように弾かれて、その場に膝を着く。

「? ……?」

自分の身に何が起こったのか、理解できてないようだ。なのにメイフェアが左手を伸ばすと右方向に跳んで躱す。普通の動物なら脳震盪でも起こしてるところだろうに、さすがのタフネスぶりだな。

けれど、戦闘モードで全力稼働中の彼女からは逃れられない。いくら、攻撃の一瞬だけ全力を出す省エネ稼働であってもだ。

横っ飛びした龍準りゅうじゅんを追ってメイフェアも横っ飛び。そのまま右手で地面に押さえ付けて、左手に持ったシリンジ型の注入器を龍準りゅうじゅんの腰に押し付け、チップを圧入。

シリンジから小さな刃が出て、マンティアンの天然の装甲に刺さる。深さは二ミリほど、刃にチップが着いていて、シリンジを離すとチップだけが中に残るという感じだ。

天然の装甲そのものを貫通することはない。なのでおそらく痛みもない。

こうしてチップを埋め込むことには成功したのだった。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

レディース異世界満喫禄

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:2,166pt お気に入り:1,187

転生したら神だった。どうすんの?

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:184pt お気に入り:4,255

異世界のんびり料理屋経営

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:213pt お気に入り:3,730

S級冒険者の子どもが進む道

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:451

ウィスタリア・モンブランが通りますよぉ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:49pt お気に入り:48

不死の大日本帝國軍人よ、異世界にて一層奮励努力せよ

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,222pt お気に入り:38

(自称)我儘令嬢の奮闘、後、それは誤算です!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:404pt お気に入り:3,340

処理中です...