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第四世代

玲編 ヘンゼルとグレーテル

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そうして絵本を手にしたひかりが戻ってくると、二人してその場に座り込んで、絵本を読み始める。

見た目はすっかり変わってしまったが、その光景から受ける印象は、かつてのそれを思い起こさせるには十分だった。幼いひかりめいの姿を。

俺にとって決して都合いいばかりじゃなかったが、二人は本当に<いい子>だったよ。ちゃんと姉妹だった。

すると、れいもじっとそんな二人を見詰めている。それに対してひかりは、

れいえいも一緒に見る?」

昔の面差しを残しながらも、同時にすっかり<母親の顔>で、れいえいに声を掛ける。

「……」

そんなひかりに戸惑いながらも、れいえいひかりの隣に座って、絵本を覗き込んだ。食事のことはすっかり忘れているようだ。まあ、そこまで飢えてたわけじゃないんだろう。

ちなみにこの時、ひかりが読んでいたのは、<ヘンゼルとグレーテル>だった。原典に近い解釈で書かれた<大人向けの絵本>であるそれは、

『長い飢饉の果てに両親が、自分達が生き延びるためにヘンゼルとグレーテルを木こりに依頼して森に捨ててくるように画策する。しかし、両親が日に日に自分達に厳しく当たるようになっていったことに不信を感じていたヘンゼルはその密談を盗み聞きし、森に捨てられても戻ってこれるように月明りを浴びて光る小石を集めて対策した。

そして木こりに連れられる際にその小石を目印として落としていき、森に置き去りにされて夜を迎えると、月明りで光る石を頼りに家へと生還。両親は上辺では子供達が戻ってきたことを喜ぶが、飢饉が解消されない限りは共倒れになってしまうがゆえに、再度、木こりに今度こそ戻ってこれないように遠くに捨ててくるように依頼する。

前回と同じく月明りに光る石を道しるべとして残していたヘンゼルだが、今度は前回よりもずっと遠くに連れていかれたため石が途中でなくなり、仕方なく、昼食として持たされていたなけなしのパンをちぎり破片を残すことにした。

それにより再び置き去りにされた後に家に戻ろうとするも、道しるべにするために落としてきたパンの破片は鳥や獣に食べられてしまっていて、帰り道が分からなくなってしまう。

絶望と恐怖に泣き叫ぶグレーテルをなだめつつヘンゼルは何とか生き延びる術を求めて森をさまよった。これにより二人は、森の中にポツンと不自然に建っている家に辿り着くものの、その家はなんと壁がブレッド、窓が砂糖を固めたものでできていて、ヘンゼルとグレーテルは空腹のあまり、壁のブレッドに齧りついてしまうのだった』

と、なかなかシビアな内容なんだよな。

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