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第四世代
玲編 姉妹
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新暦〇〇三五年八月十三日
<いい子>
<いい人>
地球人の社会ではそれが望ましいとされてきたが、だが実際には、
<都合のいい子>
<都合のいい人>
という意味合いであったことが多かったはずだ。
『誰かにとって都合のいい』
なんてのが<いい子><いい人>の条件なら、そんなもの、ロボットしかいないだろ。
『常に誰かにとって都合のいい存在でいることを、お前はできるのか?』
自分で自分に問いかけてみるがいい。
『ネットで嫌なことを言われたくないと考える人間にとって都合のいい人でいられる』
のか? ん?
俺は無理だ。『常に誰かにとって都合のいい人でいる』なんてことはできやしない。光や灯やシモーヌにとってでさえ、そんなことは無理なんだよ。だからこそ、他者に対してもそれを期待しないようにしてるだけなんだ。たとえ相手が、自分の子や孫であってもな。
ましてや、俺の実子でもない玲にそれを望めるはずもない。
ビアンカや久利生もそれはわきまえてくれている。ゆえにケイン達のことも任せておける。それだけの話だ。
で、玲は今日も鋭の部屋で睦み合っていた。そして満足すると鋭と一緒に部屋から出てきて、食事にする。
だがその瞬間、
「!?」
玲が身構えた。その理由はすぐに分かった。
明だ。明が近くに来ていたんだ。彼女が接近していたのはドローンやドーベルマンDK-aで探知できていたからそれは別に構わない。ただ、玲にとってはあくまでただのマンティアンだからな。警戒して当然だ。
鋭にとっては実母だし、鋭自身、マンティアンとしての気性はむしろ玲よりも薄いくらいだというのもあってか、落ち着いたものだ。
「キキ……キリキリキキ……」
「キリキ…キキキ……」
そんな<会話>が、鋭と明の間で交わされる。玲もある程度はマンティアンの<言葉>を理解してるみたいだから、警戒は緩めないものの攻撃には移らない。<今すぐ対処しなきゃいけない敵>ではないことは分かってくれたか。
そこに、
「どうしたの? 明。久しぶりだね」
光が現れる。明がまだここにいた頃には最も仲の良かった姉妹の再会ではあるものの、さすがに『和やか』とはいかないか。
とは言え、光の姿を見た明の体からさらに緊張感が薄れるのが見て取れた。明にとって光が、
<大好きなお姉ちゃん>
であることは今も変わってなかったか。もしかすると、歳をとって自身の衰えを実感したことで、また光に甘えたくなったのかもしれないな。
なんてことを俺が察する以上に、光には伝わるものがあったようだ。
「絵本、読んだげようか?」
光の問い掛けに、俺の目には何か反応したようには見えなかったんだが、光はそれを感じ取ったらしく、絵本を取りに家に戻ったのだった。
<いい子>
<いい人>
地球人の社会ではそれが望ましいとされてきたが、だが実際には、
<都合のいい子>
<都合のいい人>
という意味合いであったことが多かったはずだ。
『誰かにとって都合のいい』
なんてのが<いい子><いい人>の条件なら、そんなもの、ロボットしかいないだろ。
『常に誰かにとって都合のいい存在でいることを、お前はできるのか?』
自分で自分に問いかけてみるがいい。
『ネットで嫌なことを言われたくないと考える人間にとって都合のいい人でいられる』
のか? ん?
俺は無理だ。『常に誰かにとって都合のいい人でいる』なんてことはできやしない。光や灯やシモーヌにとってでさえ、そんなことは無理なんだよ。だからこそ、他者に対してもそれを期待しないようにしてるだけなんだ。たとえ相手が、自分の子や孫であってもな。
ましてや、俺の実子でもない玲にそれを望めるはずもない。
ビアンカや久利生もそれはわきまえてくれている。ゆえにケイン達のことも任せておける。それだけの話だ。
で、玲は今日も鋭の部屋で睦み合っていた。そして満足すると鋭と一緒に部屋から出てきて、食事にする。
だがその瞬間、
「!?」
玲が身構えた。その理由はすぐに分かった。
明だ。明が近くに来ていたんだ。彼女が接近していたのはドローンやドーベルマンDK-aで探知できていたからそれは別に構わない。ただ、玲にとってはあくまでただのマンティアンだからな。警戒して当然だ。
鋭にとっては実母だし、鋭自身、マンティアンとしての気性はむしろ玲よりも薄いくらいだというのもあってか、落ち着いたものだ。
「キキ……キリキリキキ……」
「キリキ…キキキ……」
そんな<会話>が、鋭と明の間で交わされる。玲もある程度はマンティアンの<言葉>を理解してるみたいだから、警戒は緩めないものの攻撃には移らない。<今すぐ対処しなきゃいけない敵>ではないことは分かってくれたか。
そこに、
「どうしたの? 明。久しぶりだね」
光が現れる。明がまだここにいた頃には最も仲の良かった姉妹の再会ではあるものの、さすがに『和やか』とはいかないか。
とは言え、光の姿を見た明の体からさらに緊張感が薄れるのが見て取れた。明にとって光が、
<大好きなお姉ちゃん>
であることは今も変わってなかったか。もしかすると、歳をとって自身の衰えを実感したことで、また光に甘えたくなったのかもしれないな。
なんてことを俺が察する以上に、光には伝わるものがあったようだ。
「絵本、読んだげようか?」
光の問い掛けに、俺の目には何か反応したようには見えなかったんだが、光はそれを感じ取ったらしく、絵本を取りに家に戻ったのだった。
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