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第四世代

玲編 極端

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新暦〇〇三五年八月六日



かくは、野生のマンティアンとしては子煩悩だったと思う。えいの時もそうだったが、せいに対しても、本当に命の危険があった時には手を貸したりしてくれたからな。

共食いもすることのあるマンティアンではそれはむしろ珍しいことだろう。

おかげで、二人とも無事に育ち、巣立つことができた。まあ、えいはマンティアンとしては特殊な形でも、せいはそれこそ普通のマンティアンとして生きてるわけで。

ドーベルマンMPMを間に立てないとこっちにも危険が及ぶくらいには。

そうだ。俺だってしっかりと血縁上の孫にあたるせいの餌にされる可能性があるんだ。ここはそういう世界で、俺達はそれを当然のこととして受け入れてる。もちろん、食われないようにはしてるけどな。

<子>とか<孫>とか関係なく、そう簡単に食われてやるわけにはいかない。自分の命を守るのも当然のことなんだよ。

地球人はとにかく極端に考えすぎる。

『子が年老いた親を守らないのが普通なら、親を見捨てろって言うのか!?』

的にな。なんでそう攻撃的なのかねえ。親の方からそれを当然のこととして洗脳しようとするのはおかしいというだけで、子が親を守りたいと思うのなら好きにすればいいし、『自分で自分のことが守れなくなったのならさっさと死ね』みたいに割り切れないのが人間ってもんだろう? だったら、自分の力だけで生きられない個体でも生きられるような仕組みを考えることができるのも人間という生き物の特徴じゃないか。

だから俺だって認知症を患ったひそかを最期まで看取ったし、ひかりあかりもシモーヌも反対しなかった。それだけの話なんだよ。

子供をまるで道具のようにして自分にとって都合よく操ろうとするのと、子供に慕われた結果、年老いてからも大切にされるのは違う。俺はあくまで、子供達に恨まれるようなことがあればそれが自分に返ってくることもあると覚悟してるだけに過ぎない。

加えて、そんな風に考えてるだけなのをいちいち極端に解釈して<攻撃していい理由>に仕立て上げようという地球人の性根が浅ましいと思ってるだけだ。自分の子供を、年老いた自分を守らせるための道具にしようと考えてるなら好きにすればいい。その結果がどうなろうと俺には関係ない。

もっとも、今の地球人の社会では、高齢者の介護はロボットの役目だけどな。子供にやらせる親はほとんどいない。

生きている限り<矛盾>はある。その矛盾とどう向き合っていくかというのも、人間が人間として生きていく上では重要なことになると思う。

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