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第三世代

灯編 思い通りにならないという現実

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それもこれも、

『こちらの思い通りにならない』

という事実だ。それぞれ好きな隠れ家を見付けてそこに隠れてしまって思い通りにならないし、当面の間はこちらの決めたところに糞をしてくれそうにないというのも、

<思い通りにならないという現実>

だ。でも、<子育て>というのはそもそもそういうものだ。

『自分じゃない人間を育てる』

のなら、自分の思い通りになると考える方がおかしい。

俺ももう百六十年あまり生きてきて、ここで何人もの子供達を見てきて、それでも自分以外の人間を自分の意のままに操る方法なんか見付けられなかったからな。

そして、<数千年分の人間達の振る舞い>をデータとして収集し続けたAIも、俺の実感を裏付けてくれてる。

地球人自身、自らの歴史を振り返ればその結論にしか辿り着けないというのに、今なお、

『すべての人間を自分の意のままに操ることができる方法はある』

などという夢想を捨てられない人間がいるという事実そのものが、

『すべての人間を自分の意のままに操ることができる方法などない』

という現実を突き付けてくるんだよ。

いい加減に自覚しろ。

『自分以外の人間を意のままに操る』

なんてことができるとかガキ臭い妄想は、現実には存在しないってことをな。それをやろうとしてしっぺ返しを食らった奴がどれだけいたのか、歴史を学び直せ。

自分の子供でもそれは同じだ。『意のままに操ることができない』からこそ、ギリギリのところで互いに折り合いをつけるしかないってことをな。

相手が自分の子供だからって好き勝手できるわけじゃないんだ。<人間の子>として生まれてきちまった時点でそれはもう、

<自分じゃない一人の人間>

なんだよ。俺達はその現実に向き合おうとしてるだけだ。

ケイン達には、すでに<人間性>が生まれ始めてる。それがどのレベルにまで至れるかはまだこれから確認することになるが、別に心配はしてない。ちゃんとそれぞれに合わせて対応するさ。

それこそが<社会>ってもんだ。それを実現できるだけのリソースはもうある。セシリアがケイン達と接することで得たデータは蓄積され解析され、アリスシリーズやドライツェンシリーズやドーベルマンMPMらにもフィードバックされる。

人間だけじゃ対処しきれないことを補うための道具としてロボットは存在する。人間でもできる奴はできるが、それは『誰でもできる』ということには繋がらない。しかしロボットは、機種によってできることが違うことがあるが、同一の機種なら、同期すれば同じことができるようになるんだよ。

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