1,509 / 2,650
第三世代
灯編 ナイスファイト
しおりを挟む
ビアンカがケイン達を気にしてることについて、未来は少しヤキモチを妬いているようだった。だが灯はそれに対して、
『お兄ちゃんなんだから我慢しなさい!』
とは言わない。ヤキモチの矛先をケイン達や黎明に向けることは許さないが。だからといってただ我慢を強いるわけでもない。
地球人の大人だって、一方的に我慢させられることを嫌ってたじゃないか。
『言いたいことも言えない世の中なんておかしい!』
とか言い訳して、自分とは何の関わりもない相手を罵っていたりしたじゃないか。そういうのは本来、『礼儀に反する』行いだっただろう? なのに、自分の鬱憤をぶつけようとする。それこそ、『我慢する』ことなく、な。
自分は我慢したくないが、他者には『我慢しろ』と? 随分とムシのいい話じゃないか。
で、
『お前らは我慢してないクセにこっちには我慢させようとする! ふざけんな!!』
とキレた奴がトラブルを起こしたりもする。
散々そういうことを繰り返してきたのに、まだ『自分は我慢したくないが他者には我慢させようとする』というのを続けるのか?
なんでそれで上手くいくと思えるんだ?
とは言え、鬱憤をぶつける相手や手段は選ばなくちゃいけない。灯は、それを未来に教えてくれてるんだよ。
今の時点では未来よりも強い自分に対して、ボクシングのトレーニングの<ミット打ち>的な形で、ヤキモチでむしゃくしゃしてる自分の鬱憤を叩き付ける。そんな未来を、
『メンドクサイ。そんなことしてられない』
なんて甘えたことは言わずに、灯は受け止めてくれる。
ビシッ!! バシッ!!
と、とても幼児が出す音とは思えない衝撃音をさせながら、未来は灯の掌を拳で打つ。
「まだまだ! そんなものか!? ドンドン来い!」
灯はそうハッパを掛けて、未来を鼓舞した。すると未来も、さらに回転を上げる。地球人のプロボクサー顔負けの腰の入った体重の乗った、それこそ一発一発が一撃必殺の威力を持ったパンチを、無数に繰り出してくる。
「うおおおおおおおっ!!」
いつしか雄叫びまで上げながら、未来は今の自分のすべてを灯の掌に叩きつけた。
そうしてたっぷり十分はフル回転でパンチを繰り出し続け、汗だくになって息を切らして、彼はその場に腰を落とした。そんな彼に対して、灯は、
「よし! 未来! ナイスファイト!!」
ニヤリと笑みを浮かべつつ右手の親指を立てて称えた。すると未来も、ニッと笑って体を起こして、ピューっと川に向かって走り、そのまま飛び込んだ。
それを見届けて、灯は、
「痛てて……未来、強くなったなあ……」
赤くなった自分の両手を振りながら嬉しそうに笑ったのだった。
『お兄ちゃんなんだから我慢しなさい!』
とは言わない。ヤキモチの矛先をケイン達や黎明に向けることは許さないが。だからといってただ我慢を強いるわけでもない。
地球人の大人だって、一方的に我慢させられることを嫌ってたじゃないか。
『言いたいことも言えない世の中なんておかしい!』
とか言い訳して、自分とは何の関わりもない相手を罵っていたりしたじゃないか。そういうのは本来、『礼儀に反する』行いだっただろう? なのに、自分の鬱憤をぶつけようとする。それこそ、『我慢する』ことなく、な。
自分は我慢したくないが、他者には『我慢しろ』と? 随分とムシのいい話じゃないか。
で、
『お前らは我慢してないクセにこっちには我慢させようとする! ふざけんな!!』
とキレた奴がトラブルを起こしたりもする。
散々そういうことを繰り返してきたのに、まだ『自分は我慢したくないが他者には我慢させようとする』というのを続けるのか?
なんでそれで上手くいくと思えるんだ?
とは言え、鬱憤をぶつける相手や手段は選ばなくちゃいけない。灯は、それを未来に教えてくれてるんだよ。
今の時点では未来よりも強い自分に対して、ボクシングのトレーニングの<ミット打ち>的な形で、ヤキモチでむしゃくしゃしてる自分の鬱憤を叩き付ける。そんな未来を、
『メンドクサイ。そんなことしてられない』
なんて甘えたことは言わずに、灯は受け止めてくれる。
ビシッ!! バシッ!!
と、とても幼児が出す音とは思えない衝撃音をさせながら、未来は灯の掌を拳で打つ。
「まだまだ! そんなものか!? ドンドン来い!」
灯はそうハッパを掛けて、未来を鼓舞した。すると未来も、さらに回転を上げる。地球人のプロボクサー顔負けの腰の入った体重の乗った、それこそ一発一発が一撃必殺の威力を持ったパンチを、無数に繰り出してくる。
「うおおおおおおおっ!!」
いつしか雄叫びまで上げながら、未来は今の自分のすべてを灯の掌に叩きつけた。
そうしてたっぷり十分はフル回転でパンチを繰り出し続け、汗だくになって息を切らして、彼はその場に腰を落とした。そんな彼に対して、灯は、
「よし! 未来! ナイスファイト!!」
ニヤリと笑みを浮かべつつ右手の親指を立てて称えた。すると未来も、ニッと笑って体を起こして、ピューっと川に向かって走り、そのまま飛び込んだ。
それを見届けて、灯は、
「痛てて……未来、強くなったなあ……」
赤くなった自分の両手を振りながら嬉しそうに笑ったのだった。
0
お気に入りに追加
193
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります
京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。
なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。
今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。
しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。
今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。
とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる