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第三世代

灯編 生きるためにすること

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オオカミ竜オオカミを容赦なく倒すあかりの姿を見つつも、

『外敵と派手に戦うことだけが、<生きる>ということじゃない』

と、俺はここで生きてきてつくづくそれを思い知ったよ。そもそも、毎日毎日常に外敵と戦い続けてるわけでもない。食うために食糧を得ることはするものの、それさえ、俺達は今じゃドーベルマンDK-aやドーベルマンMPMに任せている部分も少なくないからな。

マンティアンやアクシーズ、ボクサー竜ボクサーオオカミ竜オオカミ、レオンといった<外敵>すら、やっぱりドーベルマンDK-aやドーベルマンMPMに任せて近付かせないようにしている。

だが、それだけで生きていけるわけじゃないんだ。特に人間の場合は、

『人間として生きるためにはどうすればいいか?』

ってことを常に考えることを要求される。

『いちいちそんなことを考えなくても生きていける!!』

と言う奴もいるだろうが、それは単に、

『人間として生きるために必要な諸々を他人任せにして丸投げにしているだけ』

に過ぎない。自分以外の誰かがそれを考えて環境を整えてくれているから自分が考えずに済んでるだけだ。

そうして何も考えない者達が自分の感情や気持ちや気分だけを優先して一方的な要求をするだけなのを、

<衆愚政治>

と言うんじゃないのか? かつて地球では、古代ギリシアの頃からそういう失敗を繰り返してきたらしいな。その失敗をわざわざ朋群ほうむでも繰り返すのか?

それはあんまりにも情けなくないか?

となれば、ここで生きる者達一人一人がちゃんと考えるようにしなきゃいけないだろ。考えるばかりで何もできないのも問題だが、だからといって何も考えずに感情だけで何とかなるほど、人間の社会ってのは単純じゃない。

その場その場の感覚だけで生きていきたいなら、野生の獣に戻るべきだな。少なくともそれは<人間>とは言えない。

それをあかりもよく分かってくれてる。彼女はいかにもその場の感覚だけで生きてるようにも見えるが、実際はそうじゃない。その時点でどう振る舞うことが最適解なのかを、自然に考えることができているだけだ。

だから思い悩んだりしてないようにも見える。

頭の回転が速くて答を出すのが早くて、考えてるようには見えないだけだ。

それゆえ、ケイン達の相手をするために育児室に向かうビアンカから黎明れいあを受け取る久利生くりうのことも、

「いよっ! パパ! 頑張ってるね♡」

と当たり前のように気遣える。そして何より、他者を嘲らない。愚弄しない。侮辱しない。幼くて拙い未来みらいのことも軽んじないし、未熟ゆえにまだまだ未来みらいに振り回されがちなルコアのことも見下さない。

他者を嘲り愚弄し侮辱し軽んじ見下すことが何をもたらすか、しっかりと理解してくれてるんだよ。

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