未開の惑星に不時着したけど帰れそうにないので人外ハーレムを目指してみます(Ver.02)

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
1,506 / 2,644
第三世代

灯編 命が終わる時

しおりを挟む
「ゲ……? ゲ…プ……?」

オオカミ竜オオカミにとってはそれこそ何が起こったのか分からなかっただろう。そしてそれを理解する間もなく、ビクビクと痙攣を始めた。手も足も、ただ虚空を掻くばかりでもう意味のある動きができない。

命が終わる時のそれだ。

「……」

あかりは、確実に息の根が止まるまで、まったく容赦をしなかった。油断もしなかった。容姿は地球人そのものでありつつ、完全な<野生の獣の姿>がそこにはあった。

明るくて朗らかで家族をとても大切にしているあかりの、もう一つの姿。

ビクキアテグ村で穏やかに暮らしていても、彼女の本質は獰猛なアクシーズなんだということがよく分かる。

外敵に対しては容赦ない、な。

けれど、ただ獰猛で残忍なだけじゃない。完全に息の根が止まったことを確認すると、

「じゃ、手伝って。久利生くりう

「ああ、分かった」

久利生くりうと一緒に手際よく仕留めたオオカミ竜オオカミの解体を始めた。

奪った命は無駄にしない。自分達が生きているのは他の命をいただいているからだということも、彼女はよく理解している。だからこの老オオカミ竜オオカミの命も、きちんと自分達が生きるために役立てさせてもらうんだ。

「~♪」

とは言え、解体を始めたあかりは、さっきまでとは打って変わって鼻歌交じりに楽しげだった。気持ちの切り替えが早い。

まあ、当然と言えば当然なんだけどな。

なお、オオカミ竜オオカミの肉は決して『美味い』という種類のものじゃない。ましてや年老いたオオカミ竜オオカミのそれじゃ、な。

ただ、下ごしらえや調理法によってはかなりマシになるから、無駄にはしないんだ。これがビクキアテグ村での<食肉の確保法>の一つではある。

まだ、畜産は始めていない。肉は基本的に多くを狩猟によって得ている。ドーベルマンMPMが狩ることもあるが、

『戦って勝つこと』

それが肉を得る条件だった。互いに命を同じ土俵に置き、戦い、そして勝つこと。これが生きるためには必要であることを忘れないために、敢えてそれを基本にしてる。

正直、俺には真似のできないことだな。こっちではエレクシアやイレーネやドーベルマンDK-aが狩ってくれたものをいただいてる状態だ。

戦う力を持つ者が多いビクキアテグ村ならではの方針だよ。

その中でもあかりは、こと<狩り>においてはエキスパートである。ビアンカや久利生くりうはあくまで<軍人>としてのスキルを持ってるんであって、<ハンター>ではないからな。

それでいてあかりは、<ハンター>でありつつ仲間を慈しむ存在でもある。

これを彼女はちゃんとわきまえてくれてるんだ。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

学園長からのお話です

ラララキヲ
ファンタジー
 学園長の声が学園に響く。 『昨日、平民の女生徒の食べていたお菓子を高位貴族の令息5人が取り囲んで奪うという事がありました』  昨日ピンク髪の女生徒からクッキーを貰った自覚のある王太子とその側近4人は項垂れながらその声を聴いていた。  学園長の話はまだまだ続く…… ◇テンプレ乙女ゲームになりそうな登場人物(しかし出てこない) ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

母に理不尽に当たり散らされたことで家出した私は――見知らぬ世界に転移しました!?

四季
恋愛
幼い頃、同居していた祖母から言われたことがあった。 もしも嫌なことがあったなら、電話の下の棚から髪飾りを取り出して持っていって、近所の神社の鳥居を両足でくぐりなさい――。  ◆ 十七歳になった真琴は、ある日母に理不尽に当たり散らされたことで家出した。 彼女が向かったのは神社。 その鳥居をくぐると――?

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...