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第三世代

灯編 努力

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だが、<新米パパ>である久利生くりう自身は、本質的な部分でちゃんとわきまえてくれてるから、俺は別に心配してない。

『子供は親の振る舞いを見て人間としての在り方を学んでいく』

というのを知っているんだ。自分は人としていい加減な振る舞いしかしてこなかったクセに、

『子供には立派な人間になってほしい』

なんてのは、まぎれもない<他力本願>で<他人任せ>な無責任でしかないんだよ。なのに親は、

『親がどんなのでも子供の側が努力すれば何とでもなる』

などと戯言を口にすることがある。まてまて、それを言うならまず自分はどれだけ<努力>したってんだ? 

<子供が社会に出ていくのに不利な条件を作らない努力>

をしたのか? 『努力すれば何とでもなる』と言うのなら、『這い上がれる』と言うのなら、<子供が社会に出ていくのに不利な条件>しか用意できなかった親は何を努力したって言うんだ? 努力してないじゃないか。

『努力したがどうにもならなかった!!』

と言うなら、『努力すれば何とでもなる』というのを真っ向から否定してるぞ? 酷い矛盾もあったもんだ。

『自分は努力しないが子供には努力という言葉で圧を掛ける』

『自分は努力したものの上手くいかなかったが子供には『努力すれば何とでもなる』と噓を言う』

そんな親の在り方を見てきた子供が何を学び取るのか、想像もできないのか?

現実では、トンビはタカを生まない。トンビの子供はどう足掻いてもトンビだ。

ここでさえ、俺の子供だったひかりあかりは人間として育ったが、同時に、ひそかの子供でもあるほまれはパパニアンとして育った。決してまったく別の何かになったわけじゃない。

となれば、アラニーズとヒト蜘蛛アラクネは、生物的には決定的な違いがないわけだから、アラニーズとして育つかヒト蜘蛛アラクネとして育つかは、どっちの可能性も十分にあるわけだ。

でも幸い、セシリアが言うとおり、人間として育つ兆候が見え始めているのなら、しっかりと<人間としての在り方>を示すだけだ。その努力を怠る人間が<努力>を語るなど、それこそ笑止千万。

自分が<努力>という言葉で殴られたくないのなら、自分も誰かを努力という言葉で殴るのはやめておけ。

<親としての在り方>について他人からあれこれ口出しされて嫌だったりしたんだろう? 『努力が足りない』とか言われて嫌だったりしたんだろう? なのになんで努力という言葉で子供や他人を殴る? 

<痛み>を知る人間は優しくなれるんじゃなかったのか? 努力という言葉で殴られて痛みを知ったのなら、なんで努力という言葉で無慈悲に他の誰かを殴る?

おかしいじゃないか。

だが、久利生くりうはそれをわきまえてるんだよ。

久利生くりうは完全に俺の<上位互換>だ。俺にできたことはできるさ。

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