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第三世代

灯編 新米パパ

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新暦〇〇三五年五月二十五日



『どちらに転ぶかは、ケイン達それぞれをちゃんと見て判断しなきゃいけないってことだ』

そう覚悟を持って臨むとな、案外、どうってこともないもんだよ。

まあそれは、俺がすでに自分の子供達の事例を見てきて慣れてるからっていうのもあるだろう。それについて久利生くりうが、黎明れいあにミルクをあげながら、

「頭では分かってるつもりだけれど、やっぱり不安なものだね。『子供が人間として育つかどうか分からない』というのは……」

と口にした。それに対して俺は、

「ああそうだな。俺の場合は、『なんかもうひたすら振り回されてる間に気付いたらそうなっていた』って感じだったからそれほど心配したり悩んだりした覚えがないんだが、冷静に考えれば不安になって当然だと思う」

正直に応えた。この辺りは<先輩親>として力になりたいところだ。久利生くりうは非常に優秀な人物だが、それでも、<親>としては未来みらい黎明れいあに続いてというだけだし、しかもまだ未来みらい黎明れいあも幼い。子供を成人させてようやく自分の接し方が適切だったかどうかがおぼろげながら見えてくるわけだから、今はまだまだ、

<新米パパ>

なんだよな。ましてや、ケイン達とはそれこそ血も繋がっていない。血が繋がっていなくても『誰かを愛する』ことはできるんだから、『血が繋がってないから絶対に愛せない』わけじゃないものの、心理的な部分で、

『血が繋がっているか否か?』

は少なからず影響することも事実だろう。俺だって、きたるのことは娘のようには感じていながらも、やっぱり血の繋がった実子との間には決定的な違いも感じていたしな。

その事実に目を瞑って、

『血が繋がってなくても愛せて当然!!』

なんて声高に言うのも違うと思う。だから久利生くりうの不安も否定はできない。

だからこそ、

「心配や不安はあって当然だ。ましてや慣れてないことを完璧にこなせなんていうのもただの無理難題だしな。だからこそ俺達がいるんだ。久利生くりうとビアンカだけで抱え込んでしまう必要はない。ケイン達を受け入れる決断をしたのは俺達も同じだ。その決断をしたのなら相応の責任が生じる。俺はそれを忘れない」

と、きっぱりと告げさせてもらった。久利生くりうやビアンカだけで背負いきれないなら、俺も一緒に背負う。そういうことだ。子供を生むかどうかを決断するのは確かに親の勝手だが、これからの朋群ほうむ人の社会を構成する一員としてケイン達が生まれることを望んだのは俺達だから、社会の側にも責任はあるんだよ。

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