1,472 / 2,647
第三世代
灯編 朝食
しおりを挟む
そう言えば、密は<認知症>まで患った果てに亡くなったんだよな。完全に俺が彼女の生涯を捻じ曲げてしまった。普通は認知症など患う前に生涯を終えるか、認知症を発症して野生で生きていく能力を失えばその時点で天敵などに狩られて命を落とすのが普通だ。なのに、密は生きられてしまった。俺の下にいたがゆえに。
その事実とも向き合えたのも、やっぱり、光や灯という<俺の子>がいて、シモーヌがエレクシアがセシリアが支えてくれたからだと思うんだ。
さらには、鷹が亡くなる直前に、灯が、
『パパは、本当にママのことを好きでいてくれたんだね……だからさ、私、パパとママの子供に生まれてこれて良かったと思ってるんだ。こんな場所でも、私はちゃんと幸せだよ。ママも幸せだったんだなって分かるよ』
なんてことを言ってくれたりもした。こんな世界に勝手に送り出した俺に、だ。それにどれだけ救われたか。
そして鷹が亡くなった時には、
『私ね…不思議なんだ……ママのこと<お母さん>っていう実感ないのに、なんかすごく、こう、胸の辺りがキューッとするんだ……』
とも言っていた。鷹に育児放棄され、直接は乳をもらったことさえない相手なのに、<母親という実感>があるのはシモーヌに対してのはずなのに、灯はそう言ってくれたんだ。そして、鷹を想って泣いた。小さな子供みたいに大きな声を上げて泣いた彼女の姿を今でも覚えている。
これが、灯という子を端的に表してる気がする。
その一方で、凛が新の下を去ってレオンとして生きるようになったりということもあった。灯は、そんな新と凛のことも受け止めてくれてた。
加えて、順が光をボクサー竜の襲撃から守ろうとして大怪我をしたりということもあったな。そしてそれが、光と順の関係を取り持つきっかけにもなった。順のことを<一人前の男>と認識するきっかけになったとも言うべきか。
で、この時点では、順を光と共有することになるんだろうなと思ってた。なのに、結果として順は灯にとってはそういう相手にはなれなかったらしく、久利生に一目惚れすることになったんだけどな。
そんなことを思い出している俺のことなんて関係なく、灯は、ルコアと一緒に朝食の用意をしてた。と言っても、それぞれ自分の分を用意して、そのついでに未来の分も用意してって感じだけどな。
で、用意ができると、家の窓から、
「未来~! 朝ごはんだよ~!」
灯が声を掛ける。すると、魚を咥えた未来が池から飛び出してきて口にした魚をバリバリと食らいつつ家に戻ってきた。もう自分で軽く朝食を済ましてたんだが、その上で三人で朝食にするってことだな。
その事実とも向き合えたのも、やっぱり、光や灯という<俺の子>がいて、シモーヌがエレクシアがセシリアが支えてくれたからだと思うんだ。
さらには、鷹が亡くなる直前に、灯が、
『パパは、本当にママのことを好きでいてくれたんだね……だからさ、私、パパとママの子供に生まれてこれて良かったと思ってるんだ。こんな場所でも、私はちゃんと幸せだよ。ママも幸せだったんだなって分かるよ』
なんてことを言ってくれたりもした。こんな世界に勝手に送り出した俺に、だ。それにどれだけ救われたか。
そして鷹が亡くなった時には、
『私ね…不思議なんだ……ママのこと<お母さん>っていう実感ないのに、なんかすごく、こう、胸の辺りがキューッとするんだ……』
とも言っていた。鷹に育児放棄され、直接は乳をもらったことさえない相手なのに、<母親という実感>があるのはシモーヌに対してのはずなのに、灯はそう言ってくれたんだ。そして、鷹を想って泣いた。小さな子供みたいに大きな声を上げて泣いた彼女の姿を今でも覚えている。
これが、灯という子を端的に表してる気がする。
その一方で、凛が新の下を去ってレオンとして生きるようになったりということもあった。灯は、そんな新と凛のことも受け止めてくれてた。
加えて、順が光をボクサー竜の襲撃から守ろうとして大怪我をしたりということもあったな。そしてそれが、光と順の関係を取り持つきっかけにもなった。順のことを<一人前の男>と認識するきっかけになったとも言うべきか。
で、この時点では、順を光と共有することになるんだろうなと思ってた。なのに、結果として順は灯にとってはそういう相手にはなれなかったらしく、久利生に一目惚れすることになったんだけどな。
そんなことを思い出している俺のことなんて関係なく、灯は、ルコアと一緒に朝食の用意をしてた。と言っても、それぞれ自分の分を用意して、そのついでに未来の分も用意してって感じだけどな。
で、用意ができると、家の窓から、
「未来~! 朝ごはんだよ~!」
灯が声を掛ける。すると、魚を咥えた未来が池から飛び出してきて口にした魚をバリバリと食らいつつ家に戻ってきた。もう自分で軽く朝食を済ましてたんだが、その上で三人で朝食にするってことだな。
0
お気に入りに追加
193
あなたにおすすめの小説

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります
京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。
なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。
今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。
しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。
今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。
とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

現代にモンスターが湧きましたが、予めレベル上げしていたので無双しますね。
えぬおー
ファンタジー
なんの取り柄もないおっさんが偶然拾ったネックレスのおかげで無双しちゃう
平 信之は、会社内で「MOBゆき」と陰口を言われるくらい取り柄もない窓際社員。人生はなんて面白くないのだろうと嘆いて帰路に着いている中、信之は異常な輝きを放つネックレスを拾う。そのネックレスは、経験値の間に行くことが出来る特殊なネックレスだった。
経験値の間に行けるようになった信之はどんどんレベルを上げ、無双し、知名度を上げていく。
もう、MOBゆきとは呼ばせないっ!!

こおりのほしのねむりひめ(ほのぼのばーじょん)
京衛武百十
ファンタジー
厚さ数キロの氷に閉ざされた自由惑星<ハイシャイン>。その氷の下に僅かに残された人間の世界に生まれ育った浅葱(あさぎ)は、十三歳を迎え一人前の砕氷(さいひ)となるべく先人達が永久凍土を掘り進めた氷窟に挑む。そこで彼女が事故のようにして巡り会ったのは、氷点下四十度の中で眠り続ける、女性の姿をした何者かであった。浅葱はそれを<ねむりひめ>と名付け、村へと連れ帰ろうとするのだが……。
筆者より。
なろうで連載していた「凍結惑星 ~こおりのほしのねむりひめ~」の、表現をマイルドにした<ほのぼのばーじょん>です。「凍結惑星 ~こおりのほしのねむりひめ~」を読むときの感じで読もうとするとずっこけるようなものしたいと思います。科学的な考証とかにはなるべく拘りたくない。と、思います(努力します)。
ちなみに筆者自身は登場人物達を三頭身くらいのデフォルメキャラという感じで脳内再生しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる