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第三世代

灯編 地球人としての感覚

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そんなひかり達に囲まれて、あかりは、元々の性格もあってか、すごく快活な子に育った。

濃茶の髪を短く刈って、パッと見には男の子に見えることも少なくない、よく言えば<ボーイッシュ>。悪く言えば<ガサツ>な子だったよ。ひかりと一緒に調査に出るようになった頃には。

そう言えば、光莉ひかり号の破損したログの修復が成功したことで、俺達が今いるここが標高一千メートル級の断崖の上だってのが確認できたのもこの頃だったか。

ところで、当時のあかりは、『すっごい!』が口癖だったな。割と感性が先に来るタイプだったと思うんだが、実はそれは表に出てくるのがそんな感じなだけで、同時に頭は猛スピードで回転してるタイプでもあった。本質的には利口なんだよ。ひかりに負けないくらいに頭はいい。そして打算的でもある。

久利生くりうをビアンカと共有することにしたのも、彼女なりの<打算>だった。ビアンカが大好きで、そのビアンカに笑顔でいてもらうには久利生くりうの存在が不可欠で、だから久利生くりうのこともビアンカと一緒に支えたいから彼を選んだというのもあるようだ。

ここでは、

『複数の雌が優秀な雄を共有する』

というのは普通の感覚だ。自分をより愛してもらおうとして雌同士で張り合うこともあるものの、ハーレムを形成するタイプの種の場合は完全に自分だけで独占してしまおうとする例はむしろ少数派だし、基本的に一対一でつがう種でさえ、実際には繁殖の時には一対一になるだけで、子供ができたら途端に雄を追い出し、そして追い出された雄は他の雌のところに行くという種も珍しくない。あかりの実の母親であるようがまさにそういう種、アクシーズだった。

ただ、ようは、しょうすいを育ててる間は俺のことを寄せ付けようとはしなかったものの、二人が巣立つとまた俺に甘えてきたりもしたけどな。

そんな風にして本当にいろんな形質や習性を持った種がいることで、俺自身、<地球人としての感覚>などほとんど役に立たないことを思い知ったよ。

そしてじゅんと出逢ったのもこの頃だったか。

純粋なパパニアンでありながら<先祖返り>を起こして地球人と同じ姿を得たじゅん。たいていのそういう個体は母親に我が子と認識してもらえずに育児放棄されて死ぬはずが、ごくまれに育児放棄もされず生き延びることがあると思われた。もっとも、実際の事例として確認できたのは、今のところじゅんの一件のみだけどな。その一方で、

『もしかしたらそうだったかもしれない』

という事例も、ないわけじゃない。密林の中で発見されたボノボ人間パパニアンの遺体の中に、それなりに成長しつつ、肉体的な特徴は地球人のそれと推測できるのも、片手でも足りるものながら確認されてるんだ。

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