1,451 / 2,387
第三世代
蛮編 第二戦
しおりを挟む
こうしてパルディアが死に、ヒト蛇はさらに密林の奥へと進む。その侵攻を止める手段がなかった。ドローンを差し向けて気を逸らそうとはするものの近付けば尻尾の一撃で撃墜され、離れてヒト蛇から見えなくなれば無視される。そもそも改めて作ったドローンはあくまで記録用で運動性は必ずしも高くない。俺が元々持ってた<マイクロドローン>はヒト蛇にとっては虫にしか見えないのか、そもそも進行方向にいなければ意識を向けることもしない。
まったく話にならないんだ。とは言え、野生の動物達は勝てるはずのない相手とは基本的に戦わない。とっとと逃げるから、運悪く射程内に捉えられたもの以外は早々に逃げてくれるけどな。
なのに、中にはそれができない奴も稀にいる。自分の縄張りに侵入してきた得体の知れない獣を相手に、
「ガアッツッ!!」
と牙を剥いたものがいた。ヒト蜘蛛だった。<人間のようにも見える部分>がまだ少年のようにも見える若々しい個体だった。雄か。
そのヒト蜘蛛についても、蛮と縄張りを接していることもあって一応は観察していた。確かに若く強い個体だ。そこの縄張りを持っていた老いた個体を退けて縄張りを奪い取ってみせた、まさに、
<新進気鋭の若者>
といった個体だっただろうな。しかし、だからこそ自身の強さに溺れていたのかもしれない。ヒト蛇を迎え撃とうとしてしまったんだ。
<歴戦の勇士>
とも言えるような個体でさえ撤退することを選ばせる相手に、無謀にも挑もうと。
「グアッッ!!」
「ゴアアーッッ!!」
自身の縄張りを荒らす得体の知れない怪物をヒト蜘蛛は威嚇し、自身の前に立ちはだかる邪魔者にヒト蛇は激高した。
<ヒト蜘蛛vsヒト蛇、第二戦>
と言ったところだろうか。
さりとてこの若いヒト蜘蛛に勝ち目があるとは、見ててもそんな印象はまったくなかった。先の<老獪なヒト蜘蛛>との戦いの様子を見てからだと余計に。
なのに……
なのに、その若いヒト蜘蛛は、自身に猛然と飛びかかってきたヒト蛇をひらりと躱し、同時に片側三本の脚ですさまじい蹴りを叩き込んだんだ。
一本だけでもヒト蛇を怯ませることさえあるそれを、三本同時にだ。ここまで確認されたことのない戦い方だ。
なんという格闘センス。身体能力。バランス感覚。
「ゴハアッッ!?」
さすがのヒト蛇でさえ、それまで出さなかった声を上げて木の幹に叩き付けられた。しかも若いヒト蜘蛛はその機会を逃さず、追撃を行う。太い木の幹に叩き付けられたヒト蛇にさらに三本の脚での蹴りを撃ち込んだんだ。
すると、太い木が幹の途中から折れ、ヒト蛇ごと地面に落ちた。
もしかするとここまでの連戦でさらに疲労が溜まっていたのかもしれないが、それにしてもな。
そしてヒト蛇の体をよく見ると、それまで一本の紐のようになっていたはずの<食べたもの>の一部が、歪に体内に広がっているのが確認できる。
<消化器官>の一部が、衝撃で裂けてしまったみたいだな。
まったく話にならないんだ。とは言え、野生の動物達は勝てるはずのない相手とは基本的に戦わない。とっとと逃げるから、運悪く射程内に捉えられたもの以外は早々に逃げてくれるけどな。
なのに、中にはそれができない奴も稀にいる。自分の縄張りに侵入してきた得体の知れない獣を相手に、
「ガアッツッ!!」
と牙を剥いたものがいた。ヒト蜘蛛だった。<人間のようにも見える部分>がまだ少年のようにも見える若々しい個体だった。雄か。
そのヒト蜘蛛についても、蛮と縄張りを接していることもあって一応は観察していた。確かに若く強い個体だ。そこの縄張りを持っていた老いた個体を退けて縄張りを奪い取ってみせた、まさに、
<新進気鋭の若者>
といった個体だっただろうな。しかし、だからこそ自身の強さに溺れていたのかもしれない。ヒト蛇を迎え撃とうとしてしまったんだ。
<歴戦の勇士>
とも言えるような個体でさえ撤退することを選ばせる相手に、無謀にも挑もうと。
「グアッッ!!」
「ゴアアーッッ!!」
自身の縄張りを荒らす得体の知れない怪物をヒト蜘蛛は威嚇し、自身の前に立ちはだかる邪魔者にヒト蛇は激高した。
<ヒト蜘蛛vsヒト蛇、第二戦>
と言ったところだろうか。
さりとてこの若いヒト蜘蛛に勝ち目があるとは、見ててもそんな印象はまったくなかった。先の<老獪なヒト蜘蛛>との戦いの様子を見てからだと余計に。
なのに……
なのに、その若いヒト蜘蛛は、自身に猛然と飛びかかってきたヒト蛇をひらりと躱し、同時に片側三本の脚ですさまじい蹴りを叩き込んだんだ。
一本だけでもヒト蛇を怯ませることさえあるそれを、三本同時にだ。ここまで確認されたことのない戦い方だ。
なんという格闘センス。身体能力。バランス感覚。
「ゴハアッッ!?」
さすがのヒト蛇でさえ、それまで出さなかった声を上げて木の幹に叩き付けられた。しかも若いヒト蜘蛛はその機会を逃さず、追撃を行う。太い木の幹に叩き付けられたヒト蛇にさらに三本の脚での蹴りを撃ち込んだんだ。
すると、太い木が幹の途中から折れ、ヒト蛇ごと地面に落ちた。
もしかするとここまでの連戦でさらに疲労が溜まっていたのかもしれないが、それにしてもな。
そしてヒト蛇の体をよく見ると、それまで一本の紐のようになっていたはずの<食べたもの>の一部が、歪に体内に広がっているのが確認できる。
<消化器官>の一部が、衝撃で裂けてしまったみたいだな。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
163
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる