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第三世代

蛮編 第一義は自分が生き延びること

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とは言え、途轍もない能力を見せるヒト蛇ラミア相手に、<歴戦のヒト蜘蛛アラクネ>は一歩も引かなかった。それどころか、圧倒さえしてみせた。

にも拘らず、ヒト蛇ラミアもまったく怯まない。木々に容赦なく叩きつけられても、戦意が衰えない。

そんなヒト蛇ラミアに、ヒト蜘蛛アラクネも激しく攻撃性を見せ、振り回し叩き付け続ける。胴を絡ませようとしてくれば本体側の脚で蹴り飛ばして絡みつかせず、なおも振り回す。

絡みつかれれば非常に危険だと察しているのかもな。事実、ヒト蛇ラミアの力であればヒト蜘蛛アラクネを絞め殺すことも余裕だろう。ゆえに絡みつかれればそれはヒト蜘蛛アラクネの敗北を意味するのはほぼ間違いないと思う。

だからひたすら振り回し木々に叩き付けることでダメージを与えていくことを狙ってる? 知能は決して高くないヒト蜘蛛アラクネではあるものの、その辺りの<戦闘センス>のようなものは飛び抜けている可能性は高い。

中でもそういう部分が優れている個体だからこそ、生き延びていられるんだろうな。

しかし同時に、全力で動き続けているヒト蜘蛛アラクネの呼吸が乱れ始める。対して、ヒト蛇ラミアの方は、多少は動きも鈍っている印象もないわけではないにせよ、ヒト蜘蛛アラクネほどは疲れている印象もない。

むしろ、ヒト蜘蛛アラクネの方が生物としては当然の反応か。

「グウウッ!!」

いくら木に叩き付けても蹴りを食らわせても目に見えてダメージを受けている印象がないヒト蛇ラミアに、さすがのヒト蜘蛛アラクネも表情が険しくなる。それまでの凶暴なそれじゃなくて、苦みきった渋い表情って感じか。するとヒト蜘蛛アラクネは、

「ガアアーッッ!!」

最後の力を振り絞るように吠えながら猛然と回転し、その勢いでヒト蛇ラミアを空中高く放り上げた。と同時に、脇目もふらずにその場から逃げ出したんだ。

これまた、野生の動物としては当然の反応かもしれない。勝てないと判断すれば逃げる。ヒト蜘蛛アラクネのような強大な猛獣であってもそうだ。第一義は自分が生き延びることであって、敵に勝利することじゃない。勝ちきれないなら、しかも逃げるチャンスがあるなら、ためらわず逃げる。

誇りプライド>だとか糞の役にも立たないしな。

こうして空中高く放り投げられたヒト蛇ラミアは、木々の枝に自身の体を絡みつかせて衝撃を緩和。地面へと戻った。

とは言え、あのヒト蜘蛛アラクネの姿はすでにない。となればいちいち気にもしない。たまたま目の前にいて逃げ遅れた小動物をすかさず握り潰して殺し、口へと放り込み、バリバリと嚙み砕きながら前進。さらに密林の奥へと進む。

すると今度は、アサシン竜アサシンと鉢合わせたのだった。

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