1,434 / 2,381
第三世代
閑話休題 「夷嶽移送作戦」 前編
しおりを挟む
新暦〇〇三五年一月九日
こうしてなんだかんだと日々が過ぎゆく中、黎明に授乳していたビアンカがふと言い出した。
「アリアンが使えるようになったんだから、夷嶽を麓に移送することはできませんか?」
「おお!」
「確かに!」
俺とシモーヌは声を上げる。
そうだ。夷嶽は牙斬と違って数トンはあるその巨体の所為で、ドーベルマンMPMを使って誘導するしか遠ざける方法がなかった。しかし、最大積載量十五トンを誇るアリアンがあれば、夷嶽の基になったのであろう鵺竜と仮称してる巨大生物達が暮らす場所に移送することも不可能じゃない。
となれば、善は急げだ。
ビアンカと久利生の協力も得て(と言うかほとんど二人が考えたものだが)作戦を立て、ドーベルマンMPMやドライツェンシリーズではさすがに荷が勝ちすぎていると思うので、エレクシアを派遣することにする。一応、助手的な立場でグレイとドーベルマンMPM二機も随伴させるが。
「それじゃあ、よろしく頼む」
シモーヌが、詳細な夷嶽のデータから作った専用の麻酔をエレクシアに持たせ、アリアンに迎えに来てもらい、夷嶽の下へと向かう。
なお、こっちの集落の真上まで来るとさすがに走達のアリアンに対する反応のこともあって、順や深や鋭やレッド達を怯えさせてしまう可能性もあったので、少し離れたところで合流。ワイヤーで吊り上げてもらってアリアンに乗り込んだんだ。
で、この時、当の夷嶽はどうしていたかと言うと、ドーベルマンMPM<十七号機><二十三号機><二十五号機>の三機を、諦めることなく追っていた。その執念深さは本当に頭が下がるよ。しかしそのおかげもあって、すでにコーネリアス号から直線距離にして五百キロ以上離れていた。
なお、夷嶽自身の健康状態はすこぶる良好。俺達が暮らすこの台地の麓に生息する鵺竜の中に夷嶽の近似種もおり、場合によっては繁殖も可能という結果が出ていた。
やっぱり、野生に生きる動物であれば、その機会は欲しいじゃないか。それに、夷嶽や牙斬のように人間に対する異常なほどを憎悪を持っている個体でも、人間の気配さえなければ普通に野生動物として生きてる。牙斬でさえそうだ。だから、麓に行けばそれこそ人間と邂逅する可能性はなくなるわけで、夷嶽も『野生動物としては』平穏に生きられるだろう。
それに、野生の中で生きて死んでいくだけなら、<さらに強力な怪物>が生まれてくる可能性もほぼないはずだしな。
こうして<夷嶽移送作戦>は、淡々と進められたのだった。
こうしてなんだかんだと日々が過ぎゆく中、黎明に授乳していたビアンカがふと言い出した。
「アリアンが使えるようになったんだから、夷嶽を麓に移送することはできませんか?」
「おお!」
「確かに!」
俺とシモーヌは声を上げる。
そうだ。夷嶽は牙斬と違って数トンはあるその巨体の所為で、ドーベルマンMPMを使って誘導するしか遠ざける方法がなかった。しかし、最大積載量十五トンを誇るアリアンがあれば、夷嶽の基になったのであろう鵺竜と仮称してる巨大生物達が暮らす場所に移送することも不可能じゃない。
となれば、善は急げだ。
ビアンカと久利生の協力も得て(と言うかほとんど二人が考えたものだが)作戦を立て、ドーベルマンMPMやドライツェンシリーズではさすがに荷が勝ちすぎていると思うので、エレクシアを派遣することにする。一応、助手的な立場でグレイとドーベルマンMPM二機も随伴させるが。
「それじゃあ、よろしく頼む」
シモーヌが、詳細な夷嶽のデータから作った専用の麻酔をエレクシアに持たせ、アリアンに迎えに来てもらい、夷嶽の下へと向かう。
なお、こっちの集落の真上まで来るとさすがに走達のアリアンに対する反応のこともあって、順や深や鋭やレッド達を怯えさせてしまう可能性もあったので、少し離れたところで合流。ワイヤーで吊り上げてもらってアリアンに乗り込んだんだ。
で、この時、当の夷嶽はどうしていたかと言うと、ドーベルマンMPM<十七号機><二十三号機><二十五号機>の三機を、諦めることなく追っていた。その執念深さは本当に頭が下がるよ。しかしそのおかげもあって、すでにコーネリアス号から直線距離にして五百キロ以上離れていた。
なお、夷嶽自身の健康状態はすこぶる良好。俺達が暮らすこの台地の麓に生息する鵺竜の中に夷嶽の近似種もおり、場合によっては繁殖も可能という結果が出ていた。
やっぱり、野生に生きる動物であれば、その機会は欲しいじゃないか。それに、夷嶽や牙斬のように人間に対する異常なほどを憎悪を持っている個体でも、人間の気配さえなければ普通に野生動物として生きてる。牙斬でさえそうだ。だから、麓に行けばそれこそ人間と邂逅する可能性はなくなるわけで、夷嶽も『野生動物としては』平穏に生きられるだろう。
それに、野生の中で生きて死んでいくだけなら、<さらに強力な怪物>が生まれてくる可能性もほぼないはずだしな。
こうして<夷嶽移送作戦>は、淡々と進められたのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
162
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる