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第三世代

新編 私室

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そんなこんなで、改めて、

『コーネリアス号をどこまで解体して資材に転用するか?』

について、話し合う。

食堂、トレーニングルーム、大浴場、劇場、空になった保管庫、展望デッキ、大気圏内用姿勢制御翼、姿勢制御用スラスター、補助推進用ロケット、ロケット用燃料タンク、修理の当てのない主機の周辺機器。補機とその周辺機器、等々。

宇宙船として使わなければ必要ない部分については解体し、資材に転用することはすでに決まっている。問題は、

「乗員の私室区画と、公園、か」

居住スペースについても、乗員の私室以外についてはすでに解体が進んでいる。しかし、六十人分の私室については、現時点では手を付けないことにしている。シモーヌやビアンカや久利生くりうやメイガスのように、コーネリアス号乗員としての記憶や人格を持った状態で現れる者が今後もいる可能性があるからな。

とは言え、『いつまで』ということになると、俺は結論が出せなかった。すでに不時着から二千年以上経っているのにこうしてシモーヌやビアンカや久利生くりうが現れるんだから、向こう何年かで区切りをつけてしまうことが、俺にはできなかったんだ。

「正直、私個人としてはもう自分の私室は要らないと思ってる。絵本も私物も持ち出したからね。ただ……」

シモーヌが『ただ』と言い淀んだ部分を、

「今いる私達がそれを決断した後に、さらに私達が現れた時に、それで納得してくれるかどうかは分からないもんね……」

ビアンカが補足してくれた。

そうなんだ。シモーヌは、今、ここにいる。しかし、次のシモーヌが現れないという保証はどこにもないし、次のシモーヌが、今のシモーヌが絵本をはじめとした私物を持ち出したことをどう感じるかは、実は分からない。

久利生くりうが言う。

「そうだね。僕達はこうして恵まれた環境にいられることで前を向くことができてる。僕も、コーネリアス号の私室にはもう何の思い入れもない。けれど、もし、僕達のような<恵まれた環境>に生まれることができなかった久利生くりうが、<コーネリアス号乗員>という自身の立場に拠り所を求めてしまってもおかしくないと、僕自身のことだからこそ思うんだ」

問題はまさしくそこだった。ここまで『宇宙船としてはもう必要ない』と判断した部分を解体してしまったものの、果たしてそれを、

<今後生まれてくるかもしれない乗員達>

が、今のシモーヌやビアンカや久利生くりうのように納得してくれるだろうか? という問題があるんだ。

「私の後に生まれた<秋嶋あきしまシモーヌのコピー>は、なくなってしまった私室を見てどう感じるかな……」

そう呟いたシモーヌの視線の先で、タブレットの画面の中の<ホビットMk-Ⅰ>が、ちょこちょこと動いていたのだった。

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