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第三世代
新編 大人の事情
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新暦〇〇三四年三月四日
で、ビアンカが久利生の子を宿せる可能性が出てきたとはいえ、
「データを見る限りでは、連是と、密、刃、伏、鷹の件でもそうだったように、問題なく妊娠し出産に至る可能性は十分にあると思う。ただ、それはあくまで、データ上の話。実際に妊娠してみるまで分からない。一応、このデータを基にシミュレーションもしてみるけど、結果は期待しないでほしい」
専門家としてのシモーヌは、どこまでも冷静で客観的に事実を述べる。それに対してビアンカも、
「それは……覚悟してる」
と受け止める。
が、当のシミュレーションの結果は、
「シミュレーション上では、問題なく胎児として成長した。しかも、人間(地球人)の姿で」
とのこと。これには、灯もビアンカも、
「やったじゃん! ビアンカ!!」
「うん……! うん……! ありがとう、灯…!」
跳び上がって喜んで、ルコアも、
「よかったね、ビアンカ」
と祝福してくれる。さらには、こちらでタブレット越しに話を聞いていた光と和も、
「これは頑張らなくちゃね」
「頑張って、ビアンカ!」
エールを送った。
こんな風にめでたい話がある一方で、麗は、やっぱり屋根の上で落ち込んでた。その隣には、陽の姿。陽が黙って渡してくれる果実を、麗は黙って口に運ぶ。
麗と新の件については、完全にこっちの家庭内での話なので、ビアンカ達には話してない。話すとしても、もう少し様子を見てからと思ってたんだ。それに今は、ビアンカ自身に大変な変化が起こってるからな。しかも、どうやらいい方向に。だから水を差したくないというのもあった。だから俺もシモーヌも光も、余計なことは口にしなかった。
とは言え、そういう<配慮>は幼い和には理解できなくて、
「でも、麗、かわいそう……新の赤ちゃん、生めなくなっちゃった……」
ポロリとそんなことを口にしてしまう。
「…え? どういうこと……?」
一番に反応したのは、灯だった。続いて、
「何があったの?」
ビアンカも、さっきまでのはしゃぎっぷりが嘘のように真顔になって、問い掛けてくる。
『あちゃ~……』
とは思ったものの、子供には<大人の事情>なんて理解するのは難しいしな。それに、別に口止めしてたわけでもない。口止めしたところで確実に黙ってられるとは限らない。いくら見た目はミドルティーンにも見えても、実年齢ではまだ一桁だしな。
でも、灯やビアンカの反応を見て、和も自分が何かマズいことを口にしたのは悟ったらしく、
「……あの……」
と不安そうにしてた。すると光が、
「大丈夫。それは今からちゃんとお話しするから」
穏やかに言ってくれたのだった。
で、ビアンカが久利生の子を宿せる可能性が出てきたとはいえ、
「データを見る限りでは、連是と、密、刃、伏、鷹の件でもそうだったように、問題なく妊娠し出産に至る可能性は十分にあると思う。ただ、それはあくまで、データ上の話。実際に妊娠してみるまで分からない。一応、このデータを基にシミュレーションもしてみるけど、結果は期待しないでほしい」
専門家としてのシモーヌは、どこまでも冷静で客観的に事実を述べる。それに対してビアンカも、
「それは……覚悟してる」
と受け止める。
が、当のシミュレーションの結果は、
「シミュレーション上では、問題なく胎児として成長した。しかも、人間(地球人)の姿で」
とのこと。これには、灯もビアンカも、
「やったじゃん! ビアンカ!!」
「うん……! うん……! ありがとう、灯…!」
跳び上がって喜んで、ルコアも、
「よかったね、ビアンカ」
と祝福してくれる。さらには、こちらでタブレット越しに話を聞いていた光と和も、
「これは頑張らなくちゃね」
「頑張って、ビアンカ!」
エールを送った。
こんな風にめでたい話がある一方で、麗は、やっぱり屋根の上で落ち込んでた。その隣には、陽の姿。陽が黙って渡してくれる果実を、麗は黙って口に運ぶ。
麗と新の件については、完全にこっちの家庭内での話なので、ビアンカ達には話してない。話すとしても、もう少し様子を見てからと思ってたんだ。それに今は、ビアンカ自身に大変な変化が起こってるからな。しかも、どうやらいい方向に。だから水を差したくないというのもあった。だから俺もシモーヌも光も、余計なことは口にしなかった。
とは言え、そういう<配慮>は幼い和には理解できなくて、
「でも、麗、かわいそう……新の赤ちゃん、生めなくなっちゃった……」
ポロリとそんなことを口にしてしまう。
「…え? どういうこと……?」
一番に反応したのは、灯だった。続いて、
「何があったの?」
ビアンカも、さっきまでのはしゃぎっぷりが嘘のように真顔になって、問い掛けてくる。
『あちゃ~……』
とは思ったものの、子供には<大人の事情>なんて理解するのは難しいしな。それに、別に口止めしてたわけでもない。口止めしたところで確実に黙ってられるとは限らない。いくら見た目はミドルティーンにも見えても、実年齢ではまだ一桁だしな。
でも、灯やビアンカの反応を見て、和も自分が何かマズいことを口にしたのは悟ったらしく、
「……あの……」
と不安そうにしてた。すると光が、
「大丈夫。それは今からちゃんとお話しするから」
穏やかに言ってくれたのだった。
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