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第三世代

新編 優れた統治者

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『大好きなお姉ちゃんと別れたんだ』

きたるとの死別をそう表現したらしいひかりのことも、俺は、完全には理解できていなかったということだろうな。

だがそれも、俺とひかりが<別の存在>である以上は当然のことだ。気にするだけ無駄だと思う。

そんなわけで、<母親>とまではいかないが、<すごく身近な親戚の伯母さん>的に、うららに話し掛けてくれたようだ。

「……」

うららは、それに対しても応えなかった。でも、それでいい。あくまで、

『あなたの傍にいる』

という姿勢を示すのが目的だろうからな。それを裏付けるように、

「あなたは一人じゃないよ」

ひかりは最後にそれだけを口にして、ふわり、と地上に降り立った。そして、不安そうに見上げていたまどかの頭をそっと撫でて、

「大丈夫。うららを見捨てたりしない」

そうきっぱりと告げた。ひかりも、俺の考え方については受け継いでくれてるのが分かる。

『自分の思い通りにならないから、面倒だから、お前なんか要らない』

みたいな考え方はしないんだ。それだけでホッとする。

そういう考え方をしていると、相手にもそんな風に思われるからな。そもそも、

『すべてが自分の思い通りになる』

なんてことは有り得ないんだ。だからそんな考え方をしていたらやがて破綻するのは事実なんだよ。自分だけが何もかも思い通りにできて、他の奴らは我慢してろなんてのが通るわけないじゃないか。

そんなことができるのは、途轍もないカリスマ性を持った奴が、そのカリスマ性を維持できている間だけ。カリスマ性が失われた途端、それまでのツケが一気に降りかかってくる。って事例を腐るほど見てきてるのにな。

我儘放題のスターとか、カリスマ性だけで好き勝手してきた政治家とか。

カリスマ性が失われて、過去の行いが次々と暴露されて、ってのがいくつもあったよな。

だとすれば、そんなやり方をする理由がない。

ひかりもそれを理解してくれている。それでいて、彼女には彼女なりのやり方もあるんだろう。いずれは俺の後を継いでもらうことになる可能性もあることだし、それを見守るさ。

とは言え、老化抑制処置を受けて、実年齢じゃ百数十歳の俺とじゃ人生経験の差が出るだろうしな。それをエレクシア達がサポートしてくれるわけだ。

決して個人の資質だけに頼らない。二重三重にバックアップを用意して、統治の質の均一化を目指す。ロボットが存在する今なら、それが可能だし。

一人の優れた統治者に頼ってた頃には思いもよらなかったやり方が、できるようになったんだ。

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