1,382 / 2,381
第三世代
新編 野生寄りのメンタリティ
しおりを挟む
新暦〇〇三四年三月一日
しかし、『家族を見捨てるつもりはない』と言っても、過剰に干渉するのも違うからな。
『失恋とか、美味いものを腹いっぱい食って寝たら忘れる!!』
的な戯言を口にするつもりもないんだ。そんなことで忘れられるなら苦労もしないだろう。
まあ、中にはそれで忘れられるのもいるかもしれないが。
ただ、麗の場合はそうじゃないようだ。ある程度は食べるようになったものの、以前ほどの食欲はない。心なしか、瘦せたような気もする。
そんな麗に、陽は付きっきりだった。
「ねえ、麗。元気出しなよ」
とは言うものの、麗が応えないと、それ以上、しつこくはしない。それよりは和の方が、
「麗! いつまでも落ち込んでたってしょうがないよ!」
ちょっと強い言い方をする感じか。お転婆な和らしい姿だが、陽のそれは、どっちかと言えば俺に近いのかもしれない。俺の距離感を受け継いでると言うか。
どちらが正解かは、正直、分からない。とにかく麗の様子を見守るしかない。
すると、今度は光が、とん、と地面を蹴って跳び上がり屋根を掴んで、ぐい!と自分の体を軽々と持ち上げた。まるで、フィクションに出てくる<忍者>のような動き。やっぱり、密の娘だけはある。
「……」
黙って屋根の上に蹲ってる麗を挟んで、陽とは逆側に腰掛けた。そして、穏やかに話し掛ける。
「う、うあう、あ、うああ」
パパニアンの<言葉>だ。その上で、
「辛いよね。大好きな人に振り向いてもらえないというのは、きっとすごく辛いことだと思う。私はパパと結ばれたけど、大好きな人と別れないといけないとなったらすごく辛いことは分かる……家族と別れるのも辛い……」
静かに語り出した。
「私もね、最近、大好きなお姉ちゃんと別れたんだ。もう会えない……そう思うとさ、こう、たまらない気分になるんだよ。でもさ、パパや、和や、陽や、麗のことを思うとさ。頑張らなくちゃって思えるんだ……」
『大好きなお姉ちゃんと別れたんだ』
その言葉に、俺もハッとなる。
『來のことか……』
そうだ。先日、新がここを去る少し前、來がその人生を終えた……
光は、來のことを実の姉のように慕ってた。他の実の兄弟姉妹よりも、來と一緒にいることが多かった。血の繋がった兄弟姉妹の中では、一番の<姉>だったから、甘えられる相手が欲しかったのかもしれない。
そんな來が久利生を見染てここを去っても、光はとくに気にしてる様子もなかった。そして來が突然この世を去っても、悲しんでたのは確かだが、涙を流して落ち込んでって感じじゃなかったから、野生寄りのメンタリティのおかげで割り切れてるのかと思ってたんだが……
でも、本当はそうでもなかったのかもしれないな。表には出てなかっただけで……
しかし、『家族を見捨てるつもりはない』と言っても、過剰に干渉するのも違うからな。
『失恋とか、美味いものを腹いっぱい食って寝たら忘れる!!』
的な戯言を口にするつもりもないんだ。そんなことで忘れられるなら苦労もしないだろう。
まあ、中にはそれで忘れられるのもいるかもしれないが。
ただ、麗の場合はそうじゃないようだ。ある程度は食べるようになったものの、以前ほどの食欲はない。心なしか、瘦せたような気もする。
そんな麗に、陽は付きっきりだった。
「ねえ、麗。元気出しなよ」
とは言うものの、麗が応えないと、それ以上、しつこくはしない。それよりは和の方が、
「麗! いつまでも落ち込んでたってしょうがないよ!」
ちょっと強い言い方をする感じか。お転婆な和らしい姿だが、陽のそれは、どっちかと言えば俺に近いのかもしれない。俺の距離感を受け継いでると言うか。
どちらが正解かは、正直、分からない。とにかく麗の様子を見守るしかない。
すると、今度は光が、とん、と地面を蹴って跳び上がり屋根を掴んで、ぐい!と自分の体を軽々と持ち上げた。まるで、フィクションに出てくる<忍者>のような動き。やっぱり、密の娘だけはある。
「……」
黙って屋根の上に蹲ってる麗を挟んで、陽とは逆側に腰掛けた。そして、穏やかに話し掛ける。
「う、うあう、あ、うああ」
パパニアンの<言葉>だ。その上で、
「辛いよね。大好きな人に振り向いてもらえないというのは、きっとすごく辛いことだと思う。私はパパと結ばれたけど、大好きな人と別れないといけないとなったらすごく辛いことは分かる……家族と別れるのも辛い……」
静かに語り出した。
「私もね、最近、大好きなお姉ちゃんと別れたんだ。もう会えない……そう思うとさ、こう、たまらない気分になるんだよ。でもさ、パパや、和や、陽や、麗のことを思うとさ。頑張らなくちゃって思えるんだ……」
『大好きなお姉ちゃんと別れたんだ』
その言葉に、俺もハッとなる。
『來のことか……』
そうだ。先日、新がここを去る少し前、來がその人生を終えた……
光は、來のことを実の姉のように慕ってた。他の実の兄弟姉妹よりも、來と一緒にいることが多かった。血の繋がった兄弟姉妹の中では、一番の<姉>だったから、甘えられる相手が欲しかったのかもしれない。
そんな來が久利生を見染てここを去っても、光はとくに気にしてる様子もなかった。そして來が突然この世を去っても、悲しんでたのは確かだが、涙を流して落ち込んでって感じじゃなかったから、野生寄りのメンタリティのおかげで割り切れてるのかと思ってたんだが……
でも、本当はそうでもなかったのかもしれないな。表には出てなかっただけで……
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
162
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる