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第三世代

新編 そんな考え方を

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……ちょっと、感情的になってしまったな。

というのも、昔の地球の社会制度に関する資料を読んでて、先鋭化した<選民思想>についても載っててな。そこで<知能を基準にした選民思想>を広めようとしていた連中の主張を見たら、気持ちが昂ぶって。

完全に、俺の家族を狙い撃ちにしたかのような主張だったし。ひそかじんふくようも、確かに<知能>という点では完全に地球人のレベルに達していなかったし、攻撃的だったり騒ぎを起こしたりもした。それは事実だ。でも俺は、彼女達と良好な関係を築けていたと思う。<地球人の常識>には合わせられなかったとしても、彼女達は間違いなく俺にとってはかけがえのない<家族>だった。それを、

『死ねばいい』

と言われてるような気がしてな。ものすごく腹が立った。

そして今だと、それこそうららのことを言っているようで。

うららは、あらたの姿が見付けられなかったことでパニックを起こし、制御が利かなくなってしまった。一般的な地球人から見たら異様にも思えるだろう。だが、俺は、彼女がなぜそうなったかについて把握してるし、この程度なら、驚いたりもしない。異様だとも思わない。うららとしては、極めて当然の反応だ。

そして、俺だけじゃなく、シモーヌも、ひかりも、『そういうものだ』と理解してる。まどかひなたじゅんは戸惑っただろうが、それはあくまで普段のうららからは想像もつかないような取り乱し様だったからだ。

「大丈夫…もう大丈夫だよ……」

ひかりに抱き締めてもらえて、まどかも落ち着きを取り戻していた。

それよりも、ひなたがしっかりとうららの傍に寄り添ってくれていたのは驚かされた。まだまだ子供だと思ってたが、突発的な事態に戸惑いつつも冷静でいようとしてくれてたのは、すごく頼もしいよ。

ひなたも、もしかしたらこの集落を背負って立ってくれるかもしれない。その片鱗を感じさせられた。

うららは、<地球人の常識>は理解できなくても、彼女には彼女なりの<道理>がある。彼女のそれは、パパニアンとして見れば、決して飛び抜けて異様なものでもない。

地球人ではない彼女でさえ、彼女らなりの社会性というものはあるんだ。

だとしたら、同じ地球人でどうして命の選別をする必要がある? 自分の思い通りにならないからといって『死ねばいい』なんて考えるのは、結局、地球人そのものへのリスクになるぞ。そういう奴は、自分に都合よく物事を拡大解釈していくからな。

俺は、そんな考え方をここ惑星<朋群ほうむ>の社会に取り入れるつもりはない。それこそ、<多種多様な人間>が生きることになるであろうここにはな。

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