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第三世代

新編 命の選別というタブー

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<知能>を基準にして『人間か否か?』を判別することは事実上不可能だ。知能で区別するなら、

『子供は人間じゃない』

ということになってしまう。しかしそれはおかしい。

『子供は、成長と共に知能が一定の水準に達することが期待できる』

として、

『だから人間として認めてもいい』

などというのも、ただの詭弁だ。<未来に起こりえるかもしれないこと>を<命を選別する基準>に組み込むなど、愚の骨頂だしな。幼い子供は、その、

『幼い子供の時点で人間であるかどうか?』

を厳密に規定する必要があるんだ。だから、知能を基準点にすることはできない。たとえ体が大きくなっても知能がそれに追いつかなくても、だ。

これは、

<知能を基準にした選民思想>

を広めようとした者達に対して明確な<NO>を突き付けるために規定された。

まあ、現在は、たとえ遺伝子疾患であっても治療できるだけの医療技術があるから、

『疾患によって知能が失われる』

ということ自体がほとんどなくなったことで事実上の解決を見たんだが、それ以前には<知能を基準にした選民思想>はたびたび広まりを見せようとしたこともあったらしい。

今でも厳密には消えていないしな。

『人間としての知能を持たない者は、他人に危害を加える可能性がある!』

というのが、<知能を基準にした選民思想>を肯定する連中の根拠の一つらしいが、そんな、

『実際に起こってもいないことを理由に命の選別を行うことはできない』

んだよ。だいたい、幼児だって皆が皆、攻撃的か? 違うだろう? 幼児が攻撃的になる時には、その背景に、

<攻撃的になる理由>

が必ずあるんだよ。『知能が高い低い』だとか、『社会の常識が理解できるできない』とは別の理由がな。

<知能が低く、社会の常識が理解できない者>

であっても、全員が全員、他人に攻撃的になるわけじゃない。そんな当たり前の事実を無視してなにが、

『自分達は現実を見ている』

だ。

『<命の選別というタブー>に自分達は切り込む!』

だとか威勢のいいことを言ってるが、それ以前に、

<自分達にとっての都合の悪いタブー>

については見て見ぬフリをしてる時点で、ただの<ごっこ遊び>なんだよ。

『当人の周りの人間達の対処そのものが適切じゃないから、攻撃的にもなるし反抗的にもなるんじゃないのか?』

という<タブー>についてな。

<親の愛情>だとか<他人の善意>だとか、そういう<綺麗なもの>が実は<それをする側の勝手な思い込み>であり、<押し付け>でしかないかもしれない。ということから目を背けてて、何が『タブーに切り込む』だ。

俺が、<愛>や<善意>や<思いやり>といった言葉をほとんど使わないのは、俺自身がそんなものを信用してないからだしな。

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