1,357 / 2,554
第三世代
新編 選択
しおりを挟む
麗が投げ捨てて、イレーネが受け止めてくれたタブレットが、再び陽に渡されて、新の姿を麗に見せてくれた。
するとさすがに今度は麗も少し落ち着いて、
「あー…あー……っ!」
悲し気に声を上げながら新の映像に手を触れる。そんな彼女に新も応えて、タブレットに手を触れさせていた。ちょうど、ガラス越しに手を合わせるような感じで。
「あー……!」
けれど麗はやっぱり泣き出してしまう。
本当に好きなんだな。新のことが。
でも、タブレットに映る麗の姿を見る新の眼差しは、異性を見るそれじゃないのを、俺自身が<男>であり<子を持つ父親>だからこそ感じてしまった。
『やっぱりこれ、娘を見る父親の眼差しだよな……』
と……
この麗の気持ちに触れて彼女を新が受け入れてくれたら<ハッピーエンド>なのかもしれない。けれど、<気持ち>というものは、そんな簡単なものじゃないんだよな。ここで麗に同情して彼女を受け入れても、根本の部分でお互いの気持ちはすれ違ってるから、凛の時と同じ結末になるだけのような気がするんだ。しかも、新の方は、本当の気持ちを押し殺した状態でその時まで耐えることになる。
『とにかく試してみればいいじゃないか!』
と無責任な第三者は言うかもしれないが、そりゃ、どんな結末になろうが自分の胸は痛まない、責任も取らない立場なら、なんとでも言えるよな。
なんとでも。
だが俺は、そんな無責任なことはできない。麗の気持ちだけを見て、新の気持ちは無視するというのはできないんだ。
双方の気持ちが同じ方向を向いてないと、一方だけを抑えつけて我慢させるというのは、むしろ残酷なことだと俺は思う。
ことここに至っても、新は麗のことを<パートナー>とは見ていない。
そして俺は、もしかしたらと思ってしまった。
『もしかしたら新は、麗の前から姿を消そうとしている……?』
地球人の言葉は話せなくても、こちらの言ってることはある程度理解してるのは、分かってる。なにしろ生まれた時からずっと俺の傍で育ってきたからな。たぶん、自分が暮らしている集落以外にも同じような集落が他にもあることを、理解してる。
それまでは興味もなかったから、関心を示さなかっただけで。
でも、今のままじゃ麗はいつまで経っても自分を求め続けるだろう。だったら、凛が新の前からいなくなったように、自分も麗の前からいなくなろう。
そう思ったんだろうなと、察せられてしまった。
「新……それがお前の選択か……」
呟くようにそう口にした俺には、新は何も応えなかったのだった。
するとさすがに今度は麗も少し落ち着いて、
「あー…あー……っ!」
悲し気に声を上げながら新の映像に手を触れる。そんな彼女に新も応えて、タブレットに手を触れさせていた。ちょうど、ガラス越しに手を合わせるような感じで。
「あー……!」
けれど麗はやっぱり泣き出してしまう。
本当に好きなんだな。新のことが。
でも、タブレットに映る麗の姿を見る新の眼差しは、異性を見るそれじゃないのを、俺自身が<男>であり<子を持つ父親>だからこそ感じてしまった。
『やっぱりこれ、娘を見る父親の眼差しだよな……』
と……
この麗の気持ちに触れて彼女を新が受け入れてくれたら<ハッピーエンド>なのかもしれない。けれど、<気持ち>というものは、そんな簡単なものじゃないんだよな。ここで麗に同情して彼女を受け入れても、根本の部分でお互いの気持ちはすれ違ってるから、凛の時と同じ結末になるだけのような気がするんだ。しかも、新の方は、本当の気持ちを押し殺した状態でその時まで耐えることになる。
『とにかく試してみればいいじゃないか!』
と無責任な第三者は言うかもしれないが、そりゃ、どんな結末になろうが自分の胸は痛まない、責任も取らない立場なら、なんとでも言えるよな。
なんとでも。
だが俺は、そんな無責任なことはできない。麗の気持ちだけを見て、新の気持ちは無視するというのはできないんだ。
双方の気持ちが同じ方向を向いてないと、一方だけを抑えつけて我慢させるというのは、むしろ残酷なことだと俺は思う。
ことここに至っても、新は麗のことを<パートナー>とは見ていない。
そして俺は、もしかしたらと思ってしまった。
『もしかしたら新は、麗の前から姿を消そうとしている……?』
地球人の言葉は話せなくても、こちらの言ってることはある程度理解してるのは、分かってる。なにしろ生まれた時からずっと俺の傍で育ってきたからな。たぶん、自分が暮らしている集落以外にも同じような集落が他にもあることを、理解してる。
それまでは興味もなかったから、関心を示さなかっただけで。
でも、今のままじゃ麗はいつまで経っても自分を求め続けるだろう。だったら、凛が新の前からいなくなったように、自分も麗の前からいなくなろう。
そう思ったんだろうなと、察せられてしまった。
「新……それがお前の選択か……」
呟くようにそう口にした俺には、新は何も応えなかったのだった。
0
お気に入りに追加
174
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について
ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに……
しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。
NTRは始まりでしか、なかったのだ……
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
性奴隷を飼ったのに
お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。
異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。
異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。
自分の領地では奴隷は禁止していた。
奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。
そして1人の奴隷少女と出会った。
彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。
彼女は幼いエルフだった。
それに魔力が使えないように処理されていた。
そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。
でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。
俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。
孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。
エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。
※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。
※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。
俺のセフレが義妹になった。そのあと毎日めちゃくちゃシた。
ねんごろ
恋愛
主人公のセフレがどういうわけか義妹になって家にやってきた。
その日を境に彼らの関係性はより深く親密になっていって……
毎日にエロがある、そんな時間を二人は過ごしていく。
※他サイトで連載していた作品です
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる