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第三世代
新編 選択
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麗が投げ捨てて、イレーネが受け止めてくれたタブレットが、再び陽に渡されて、新の姿を麗に見せてくれた。
するとさすがに今度は麗も少し落ち着いて、
「あー…あー……っ!」
悲し気に声を上げながら新の映像に手を触れる。そんな彼女に新も応えて、タブレットに手を触れさせていた。ちょうど、ガラス越しに手を合わせるような感じで。
「あー……!」
けれど麗はやっぱり泣き出してしまう。
本当に好きなんだな。新のことが。
でも、タブレットに映る麗の姿を見る新の眼差しは、異性を見るそれじゃないのを、俺自身が<男>であり<子を持つ父親>だからこそ感じてしまった。
『やっぱりこれ、娘を見る父親の眼差しだよな……』
と……
この麗の気持ちに触れて彼女を新が受け入れてくれたら<ハッピーエンド>なのかもしれない。けれど、<気持ち>というものは、そんな簡単なものじゃないんだよな。ここで麗に同情して彼女を受け入れても、根本の部分でお互いの気持ちはすれ違ってるから、凛の時と同じ結末になるだけのような気がするんだ。しかも、新の方は、本当の気持ちを押し殺した状態でその時まで耐えることになる。
『とにかく試してみればいいじゃないか!』
と無責任な第三者は言うかもしれないが、そりゃ、どんな結末になろうが自分の胸は痛まない、責任も取らない立場なら、なんとでも言えるよな。
なんとでも。
だが俺は、そんな無責任なことはできない。麗の気持ちだけを見て、新の気持ちは無視するというのはできないんだ。
双方の気持ちが同じ方向を向いてないと、一方だけを抑えつけて我慢させるというのは、むしろ残酷なことだと俺は思う。
ことここに至っても、新は麗のことを<パートナー>とは見ていない。
そして俺は、もしかしたらと思ってしまった。
『もしかしたら新は、麗の前から姿を消そうとしている……?』
地球人の言葉は話せなくても、こちらの言ってることはある程度理解してるのは、分かってる。なにしろ生まれた時からずっと俺の傍で育ってきたからな。たぶん、自分が暮らしている集落以外にも同じような集落が他にもあることを、理解してる。
それまでは興味もなかったから、関心を示さなかっただけで。
でも、今のままじゃ麗はいつまで経っても自分を求め続けるだろう。だったら、凛が新の前からいなくなったように、自分も麗の前からいなくなろう。
そう思ったんだろうなと、察せられてしまった。
「新……それがお前の選択か……」
呟くようにそう口にした俺には、新は何も応えなかったのだった。
するとさすがに今度は麗も少し落ち着いて、
「あー…あー……っ!」
悲し気に声を上げながら新の映像に手を触れる。そんな彼女に新も応えて、タブレットに手を触れさせていた。ちょうど、ガラス越しに手を合わせるような感じで。
「あー……!」
けれど麗はやっぱり泣き出してしまう。
本当に好きなんだな。新のことが。
でも、タブレットに映る麗の姿を見る新の眼差しは、異性を見るそれじゃないのを、俺自身が<男>であり<子を持つ父親>だからこそ感じてしまった。
『やっぱりこれ、娘を見る父親の眼差しだよな……』
と……
この麗の気持ちに触れて彼女を新が受け入れてくれたら<ハッピーエンド>なのかもしれない。けれど、<気持ち>というものは、そんな簡単なものじゃないんだよな。ここで麗に同情して彼女を受け入れても、根本の部分でお互いの気持ちはすれ違ってるから、凛の時と同じ結末になるだけのような気がするんだ。しかも、新の方は、本当の気持ちを押し殺した状態でその時まで耐えることになる。
『とにかく試してみればいいじゃないか!』
と無責任な第三者は言うかもしれないが、そりゃ、どんな結末になろうが自分の胸は痛まない、責任も取らない立場なら、なんとでも言えるよな。
なんとでも。
だが俺は、そんな無責任なことはできない。麗の気持ちだけを見て、新の気持ちは無視するというのはできないんだ。
双方の気持ちが同じ方向を向いてないと、一方だけを抑えつけて我慢させるというのは、むしろ残酷なことだと俺は思う。
ことここに至っても、新は麗のことを<パートナー>とは見ていない。
そして俺は、もしかしたらと思ってしまった。
『もしかしたら新は、麗の前から姿を消そうとしている……?』
地球人の言葉は話せなくても、こちらの言ってることはある程度理解してるのは、分かってる。なにしろ生まれた時からずっと俺の傍で育ってきたからな。たぶん、自分が暮らしている集落以外にも同じような集落が他にもあることを、理解してる。
それまでは興味もなかったから、関心を示さなかっただけで。
でも、今のままじゃ麗はいつまで経っても自分を求め続けるだろう。だったら、凛が新の前からいなくなったように、自分も麗の前からいなくなろう。
そう思ったんだろうなと、察せられてしまった。
「新……それがお前の選択か……」
呟くようにそう口にした俺には、新は何も応えなかったのだった。
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