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第三世代
新編 パニック
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こうして俺とシモーヌがそれぞれ仕事をしてる間も、新はやっぱり家の屋根から周囲を窺っていた。
かと思うと、屋根から飛び降りて密林の中へと駆け込んでいく。
「エレクシア」
俺が声を掛けると、彼女はすでに察してくれていて、
「承知しました」
新を追ってくれた。
とは言え、もうその時点でエレクシアには見えていたんだけどな。新が密林に入ってすぐの場所にあった、例の<お気に入りの果実>が成ってる木を見付けてそこに行っただけだということを。
そもそもエレクシアは基本的に俺の傍を離れない。俺達の家がある集落でも、イレーネがいる時以外は、俺が光莉号に閉じこもらないと離れてくれない。
だから今も、俺から見えるところで、密林の奥に視線を向けているだけで立っている。そこからでも彼女には新の姿が見えているということだ。
これなら、新にもしものことがあってもすぐに駆け付けられるし、俺に何かあっても一瞬で駆け付けられるからな。
ますらおやドーベルマンDK-a拾弐号機がいても任せきりにはしない。最低限、イレーネと同等程度の能力を持つロボットでなければ任せてしまったりはしないんだ。
ロボットだからその辺りの融通は効かない。
でも、それでいい。彼女はそういうものなんだ。俺もそれは承知してる。長い付き合いだしな。
そして新が食事を終えて戻ってくると、
「マスター、光から通信です」
エレクシアが俺に告げた。
「ん? ああ、分かった」
タブレットで受信すると、
「お父さん? 帰りはいつくらいになる?」
との問い掛け。
「夕方までには帰るつもりだが、どうした?」
と問い返したが、タブレットから聞こえてくる<声>でなんとなく察してしまった。それを裏付けるように光が言う。
「麗が、『新がいない!』って泣いてる」
「ああ……聞こえてるよ」
やっぱり、タブレットから聞こえてきていたのは、麗の声だったか。
「あーっ! うあーっ!!」
って、泣き叫んでるんだ。麗が出掛けても帰ってきたら必ず迎えてくれた新がどこにもいなくて、彼女はパニックを起こしてしまってるんだろう。
必死な声が、胸を締め付ける。
彼女にとっては、新の存在は、それほどだということか……
「分かった。必要なことはもう済んでるから、今日はこれで切り上げて帰る」
俺はそう決断すると、
「そうね。私ももう用件は済んだし」
シモーヌもそう言ってくれた。物資の搬入も終わってる。
「新、帰るぞ!」
声を掛けると、新もローバーに乗り込んでくれた。地球人の言葉は話せないが、俺達の言ってることはある程度理解しているんだ。
かと思うと、屋根から飛び降りて密林の中へと駆け込んでいく。
「エレクシア」
俺が声を掛けると、彼女はすでに察してくれていて、
「承知しました」
新を追ってくれた。
とは言え、もうその時点でエレクシアには見えていたんだけどな。新が密林に入ってすぐの場所にあった、例の<お気に入りの果実>が成ってる木を見付けてそこに行っただけだということを。
そもそもエレクシアは基本的に俺の傍を離れない。俺達の家がある集落でも、イレーネがいる時以外は、俺が光莉号に閉じこもらないと離れてくれない。
だから今も、俺から見えるところで、密林の奥に視線を向けているだけで立っている。そこからでも彼女には新の姿が見えているということだ。
これなら、新にもしものことがあってもすぐに駆け付けられるし、俺に何かあっても一瞬で駆け付けられるからな。
ますらおやドーベルマンDK-a拾弐号機がいても任せきりにはしない。最低限、イレーネと同等程度の能力を持つロボットでなければ任せてしまったりはしないんだ。
ロボットだからその辺りの融通は効かない。
でも、それでいい。彼女はそういうものなんだ。俺もそれは承知してる。長い付き合いだしな。
そして新が食事を終えて戻ってくると、
「マスター、光から通信です」
エレクシアが俺に告げた。
「ん? ああ、分かった」
タブレットで受信すると、
「お父さん? 帰りはいつくらいになる?」
との問い掛け。
「夕方までには帰るつもりだが、どうした?」
と問い返したが、タブレットから聞こえてくる<声>でなんとなく察してしまった。それを裏付けるように光が言う。
「麗が、『新がいない!』って泣いてる」
「ああ……聞こえてるよ」
やっぱり、タブレットから聞こえてきていたのは、麗の声だったか。
「あーっ! うあーっ!!」
って、泣き叫んでるんだ。麗が出掛けても帰ってきたら必ず迎えてくれた新がどこにもいなくて、彼女はパニックを起こしてしまってるんだろう。
必死な声が、胸を締め付ける。
彼女にとっては、新の存在は、それほどだということか……
「分かった。必要なことはもう済んでるから、今日はこれで切り上げて帰る」
俺はそう決断すると、
「そうね。私ももう用件は済んだし」
シモーヌもそう言ってくれた。物資の搬入も終わってる。
「新、帰るぞ!」
声を掛けると、新もローバーに乗り込んでくれた。地球人の言葉は話せないが、俺達の言ってることはある程度理解しているんだ。
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