1,333 / 2,387
第三世代
ビアンカ編 その時
しおりを挟む
新暦〇〇三四年十一月二十八日
そうしていよいよ、その時が来た。妊娠九ヶ月ではあるものの、胎児自体は十分に育っているそうだ。パパニアンやレオンらに比べると遅いが、地球人に比べるとやはり早いのは、アラニーズであることが影響している可能性はある。
で、そのための<分娩室>を、ハートマンとグレイとドーベルマンMPMらが作ってくれた。<助産師>は、モニカとテレジアだ。これは当然、繊細な作業ができるからだな。
で、<担当医>は、久利生。自分の愛する人に赤ん坊を取り上げてもらうとか、いやはや、究極の<立会い出産>じゃないか?
なんて冗談はさて置き、シモーヌとセシリアは、モニカやテレジアが送ってくるデータや映像を見ながら必要に応じてアドバイスする役目を負っているものの、さすがに俺は蚊帳の外だ。
「ビアンカ、赤ちゃん生まれる? 生まれる?」
「ビアンカがんばれ」
そうやって応援してくれる和と陽と、そして陽に抱きついている麗も一緒にその時を待つ。
<陣痛>が始まってから丸一日。いよいよ出産が始まってからすでに十二時間。初産ってこともあってか、結構、時間が掛かってる。
医療用ナノマシンを投与して痛みなどは軽減してるそうだが、その分、進みが遅いのかもしれない。
しかし、こればっかりは何度経験してもヤキモキさせられるよな。その点、久利生はまさにその現場で主導的に動けるから、ちょっと羨ましい気がする。
だが、出産が始まって十三時間後、
「にゃああ…にゃああ…」
子猫のような泣き声。
「午後七時三十五分。無事出産。女の子だ」
タブレットから届いてくる久利生の声。そして、彼の手の中で<命の声>を上げる、羊水に濡れた赤ん坊の映像。
「いよおっし!!」
「おめでとう!」
「おめでとー!」
「おめでた~!」
「おめでとう!」
こちらで、俺と、シモーヌと、和と、陽と、光が声を上げる。
俺なんて、ガッツポーズまで取ってたよ。
そして、別のタブレットには、涙ぐむルコアと、ルコアに抱きついてる未来と、さらに二人を一緒に抱き締める灯の姿。
ああ、いいな。新しい命を迎えるこの感じは。やっぱりいい。
「さすがに今の顔を見られるのは恥ずかしいから、音声だけでごめんなさい。みんなのお陰で無事終えられました。ありがとうございます」
届いてくるビアンカの声もさすがに疲れている感じだ。医療用ナノマシンを投与しての<簡易無痛分娩>だったからか、一般的なそれよりは負担も大きかったかな。
でも、体制だけは万全だったと思う。万が一の時にはすぐさま救急対応できるように、イレーネも派遣してたからな。イレーネに搬送してもらってコーネリアス号の治療カプセルに収容する準備もできてたんだ。
「礼を言うのは俺の方だよ。ありがとう、ビアンカ。お疲れさま」
そう応えた後、
「それで、名前はもう決まってるのか?」
問い掛けると、ビアンカと久利生が、声を揃えて。
「黎明。<黎明>と書いて黎明」
そうしていよいよ、その時が来た。妊娠九ヶ月ではあるものの、胎児自体は十分に育っているそうだ。パパニアンやレオンらに比べると遅いが、地球人に比べるとやはり早いのは、アラニーズであることが影響している可能性はある。
で、そのための<分娩室>を、ハートマンとグレイとドーベルマンMPMらが作ってくれた。<助産師>は、モニカとテレジアだ。これは当然、繊細な作業ができるからだな。
で、<担当医>は、久利生。自分の愛する人に赤ん坊を取り上げてもらうとか、いやはや、究極の<立会い出産>じゃないか?
なんて冗談はさて置き、シモーヌとセシリアは、モニカやテレジアが送ってくるデータや映像を見ながら必要に応じてアドバイスする役目を負っているものの、さすがに俺は蚊帳の外だ。
「ビアンカ、赤ちゃん生まれる? 生まれる?」
「ビアンカがんばれ」
そうやって応援してくれる和と陽と、そして陽に抱きついている麗も一緒にその時を待つ。
<陣痛>が始まってから丸一日。いよいよ出産が始まってからすでに十二時間。初産ってこともあってか、結構、時間が掛かってる。
医療用ナノマシンを投与して痛みなどは軽減してるそうだが、その分、進みが遅いのかもしれない。
しかし、こればっかりは何度経験してもヤキモキさせられるよな。その点、久利生はまさにその現場で主導的に動けるから、ちょっと羨ましい気がする。
だが、出産が始まって十三時間後、
「にゃああ…にゃああ…」
子猫のような泣き声。
「午後七時三十五分。無事出産。女の子だ」
タブレットから届いてくる久利生の声。そして、彼の手の中で<命の声>を上げる、羊水に濡れた赤ん坊の映像。
「いよおっし!!」
「おめでとう!」
「おめでとー!」
「おめでた~!」
「おめでとう!」
こちらで、俺と、シモーヌと、和と、陽と、光が声を上げる。
俺なんて、ガッツポーズまで取ってたよ。
そして、別のタブレットには、涙ぐむルコアと、ルコアに抱きついてる未来と、さらに二人を一緒に抱き締める灯の姿。
ああ、いいな。新しい命を迎えるこの感じは。やっぱりいい。
「さすがに今の顔を見られるのは恥ずかしいから、音声だけでごめんなさい。みんなのお陰で無事終えられました。ありがとうございます」
届いてくるビアンカの声もさすがに疲れている感じだ。医療用ナノマシンを投与しての<簡易無痛分娩>だったからか、一般的なそれよりは負担も大きかったかな。
でも、体制だけは万全だったと思う。万が一の時にはすぐさま救急対応できるように、イレーネも派遣してたからな。イレーネに搬送してもらってコーネリアス号の治療カプセルに収容する準備もできてたんだ。
「礼を言うのは俺の方だよ。ありがとう、ビアンカ。お疲れさま」
そう応えた後、
「それで、名前はもう決まってるのか?」
問い掛けると、ビアンカと久利生が、声を揃えて。
「黎明。<黎明>と書いて黎明」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
163
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる