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第三世代

ビアンカ編 他者を敬う

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新暦〇〇三四年九月二十一日



ビアンカも、あかりも、久利生くりうも、きたるのことは今でも愛してくれている。ルコアもことあるごとに彼女が眠る池に参って、祈りを捧げてくれたりする。

しかもそれを、未来みらいも真似るようになってきた。

こっちでも、俺が、ひそかじんふくようれんの墓に挨拶しているのを、まどかひなたが真似てくれるように。

そのこと自体がもう完全に日常の振る舞いに組み込まれていて、自然とそうなってるんだ。命日とかそういう形で特別に何かするまでもなく。

そういえば誕生日もこれといって特別なことをしないからな。もしかするとここ朋群ほうむの社会には、<記念日>的な概念はあまり育たないかもしれない。そういうのに囚われるんじゃなく、常日頃から感謝したり悼んだりってのが当たり前になってくれればと思う。

『他者を敬う』

ってのも、ごく自然にできるようになってくれればなって思うんだ。何しろ、地球人の社会じゃ、

『どうするのが他者を敬うことになるのかが分からない』

とか言うのも珍しくなかったからな。なんで分からないのかが分からない。他者を敬うってことを理解してれば、年上とか年下とか関係なく相手を敬うことができるんだから、何もわざわざ、

『年長者を敬え』

なんて言わなくても済むようになると思うんだけどな。それをいちいち言わなきゃいけないってのは、つまり、『他者を敬う』ってことができてないのがそれだけ多いってことだろう? 言われなくても当たり前にやってるなら、言う必要もないよな。『年長者を敬え』とか『親を敬え』とか、いちいち言わなきゃいけないほど、『他者を敬う』って感覚が身についてないってことだ。

そもそも、その年長者や親が『他者を敬う』ってことをやってないんだから、子供だって学びようがないじゃないか。

ちょっと気に入らないことがあるだけで他人を罵る。見下す。侮る。嘲る。貶める。蔑む。親がそんなことをしててなんで子供が真似しないと思うんだ? 『他者を敬う』って姿勢を学べると思うんだ? それが俺には理解できない。

思えば、俺の両親は、俺や妹のことを、ちゃんと<一人の人間>として敬ってくれてたと思う。だから俺も、ひそかを、じんを、ふくを、ようを、シモーヌを、ひかりを、あかりを、まどかを、ひなたを、子供達を、ビアンカを、久利生くりうを、ルコアを、敬うことができるんだって実感してる。

<他者を敬う姿勢>

そのものを、俺の両親は手本として示してくれてたんだ。

それでも、つい、感情的になってしまって忘れてしまうこともあるのが人間ってものだと思うが、だとすればなおのこと、それを教わってなければできないよな。

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