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第三世代
ビアンカ編 優先順位
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「どうだ? 容体は?」
問い掛ける俺に、ドーベルマンMPMを制御しているコーネリアス号からのデータを受信したセシリアが、
「問題ありません。眠っているだけです」
と告げる。もっとも、倒れた瞬間は気を失ったんだろうけどな。そこから自力で回復して今は眠ってる状態か。
「気を失うまで動き続けるとか、無茶苦茶ですね。こんなことを続けてたらいつか死んでしまうかも……」
タブレット越しにビアンカが言った。
「確かに。今回は運が良かっただけだな。自分の限界をわきまえてないと、命を削る行為だ。運よく生き延びれば大物になるかもしれないが、その前に死ぬ確率の方が高いよな」
「そうね。野性だからそれでもいいのかもしれないけど……」
俺とシモーヌの言葉に、
「ですよね……」
ビアンカは少し悲し気に呟く。ネコ好きの彼女は、大型のネコ科の獣を連想させるレオンに対しては少なからず思い入れがあるので、余計に気になってしまうんだろう。
そして、
「少佐、私が素戔嗚の対処をしてもよろしいでしょうか?」
久利生にそう進言する。
「君が望むなら僕に異論はないが、万が一の時の優先順位は忘れないでほしい」
穏やかでありつつ、同時に毅然とした彼の言葉に、
「もちろんです。覚悟しています」
ビアンカは引き締まった表情で応えた。
<優先順位>
それはつまり、
『ビアンカ自身やルコアや灯や未来や來を後回しにしてまで素戔嗚に入れ込むことは許さない』
という意味だ。そして優秀な軍人だったビアンカも、当然、わきまえている。
『もし、素戔嗚を死なせることになったとしても……』
そういう意味だな。
「久利生とビアンカが決めたことなら、俺が口出しすることじゃない。任せるよ。必要な承認は任せてくれ」
万が一の場合、ドーベルマンMPMやモニカやハートマンやテレジアやグレイに<命令>を与えないといけないので、それはこの地で唯一の<純粋な地球人類>である俺にしかできないことだ。と言っても、実際には、久利生が出した命令を俺が承認することで効力を持たせる形になるが。
とにかく、ルコアもかなり精神的に安定してきたし、灯とも仲良くなれたから、ビアンカがつきっきりでなくても大丈夫になった。そういう意味でも、素戔嗚にかまうだけの余裕はある。
そんなわけで、もしまた素戔嗚がビクキアテグ村に近付いてくるようなら、原則、ビアンカが相手をすることに決まった。
沈んでいく夕日の中で、ビアンカは、素戔嗚が眠っている方向を見詰めていたのだった。
問い掛ける俺に、ドーベルマンMPMを制御しているコーネリアス号からのデータを受信したセシリアが、
「問題ありません。眠っているだけです」
と告げる。もっとも、倒れた瞬間は気を失ったんだろうけどな。そこから自力で回復して今は眠ってる状態か。
「気を失うまで動き続けるとか、無茶苦茶ですね。こんなことを続けてたらいつか死んでしまうかも……」
タブレット越しにビアンカが言った。
「確かに。今回は運が良かっただけだな。自分の限界をわきまえてないと、命を削る行為だ。運よく生き延びれば大物になるかもしれないが、その前に死ぬ確率の方が高いよな」
「そうね。野性だからそれでもいいのかもしれないけど……」
俺とシモーヌの言葉に、
「ですよね……」
ビアンカは少し悲し気に呟く。ネコ好きの彼女は、大型のネコ科の獣を連想させるレオンに対しては少なからず思い入れがあるので、余計に気になってしまうんだろう。
そして、
「少佐、私が素戔嗚の対処をしてもよろしいでしょうか?」
久利生にそう進言する。
「君が望むなら僕に異論はないが、万が一の時の優先順位は忘れないでほしい」
穏やかでありつつ、同時に毅然とした彼の言葉に、
「もちろんです。覚悟しています」
ビアンカは引き締まった表情で応えた。
<優先順位>
それはつまり、
『ビアンカ自身やルコアや灯や未来や來を後回しにしてまで素戔嗚に入れ込むことは許さない』
という意味だ。そして優秀な軍人だったビアンカも、当然、わきまえている。
『もし、素戔嗚を死なせることになったとしても……』
そういう意味だな。
「久利生とビアンカが決めたことなら、俺が口出しすることじゃない。任せるよ。必要な承認は任せてくれ」
万が一の場合、ドーベルマンMPMやモニカやハートマンやテレジアやグレイに<命令>を与えないといけないので、それはこの地で唯一の<純粋な地球人類>である俺にしかできないことだ。と言っても、実際には、久利生が出した命令を俺が承認することで効力を持たせる形になるが。
とにかく、ルコアもかなり精神的に安定してきたし、灯とも仲良くなれたから、ビアンカがつきっきりでなくても大丈夫になった。そういう意味でも、素戔嗚にかまうだけの余裕はある。
そんなわけで、もしまた素戔嗚がビクキアテグ村に近付いてくるようなら、原則、ビアンカが相手をすることに決まった。
沈んでいく夕日の中で、ビアンカは、素戔嗚が眠っている方向を見詰めていたのだった。
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