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第三世代

ビアンカ編 人間関係についても学ぶ場

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自身の全力を振り絞っての<力比べ>を、対ビアンカ、対ハートマン、対グレイと三戦連続でこなしすっかり疲れてしまった未来みらいは、ビアンカに畑仕事の手順を教わっていたルコアのところに来て、彼女の<蛇のような胴体>部分によじ登り、そのまま眠ってしまった。

「あらあら……」

未来みらいが落ちないようにルコアが気遣ってくれてるとはいえ、器用な寝方をする様子に、ビアンカは相貌を崩していた。その表情がまた<母親>を思わせて、俺もなんだか和んでしまう。

「え…と……」

戸惑うルコアに、

「いいよいいよ。そのままで。私のやってるのを見ててくれたらいい」

ビアンカは笑顔で告げた。

「はい……」

ルコアも、少し困ったような表情をしつつも振り返って未来みらいを見詰め、穏やかに微笑んだ。

その姿は、今の自分をようやく受け入れられた<精神的余裕>が窺えるものだった。

だからこそルコア自身も、ビクキアテグ村の一員として何かの役に立ちたいと考えて、畑仕事を学ぼうとしてるんだろう。誰からもそうするように言われたわけじゃないのに。

本当なら彼女には、<勉強>をしてもらいたいところだが、まあ、村での仕事を学ぶのも<勉強>だしな。

ちなみに、座学を担当しているのも、モニカである。

コーネリアス号や光莉ひかり号に蓄積された膨大な<知識>を自在に取り出すことができる上に、人間(地球人)のように焦ったり苛々せずに丁寧に教えられるモニカは、<教師役>にはそれこそうってつけか。

実際、メイトギアに専用のプログラムをインストールして、学校には通わず<自宅学習>という形をとる例も少なくないそうだ。

『学校は、人間関係についても学ぶ場だ!』

などと主張する者もいまだにいるが、本気でそれをするつもりなら、教師には、<座学>だけでなく、<心理学>等、広範な専門知識が求められるはずなんだ。それもきちんと備えないで個々の教師がそれぞれ<自己流>でやるもんだから<質>がまったく一定にならず、<ハズレの教師>に当たった生徒は悲惨な目に遭ったり、およそ<まとも>とは言い難い価値観を植え付けられたりということが頻発したそうじゃないか。

中には、クラスをまとめ上げるために一人の生徒を<スケープゴート>にしてイジメさせることで自分にとって都合のいいクラス運営をする教師や、偏った歴史観を生徒に植え付けて<反政府主義者養成学級>の様相を呈するような事例もあったとも聞く。

大体、かつては、大学を卒業したらそのまま<学校以外の社会>を知らずに教師としてまた学校に舞い戻ってきてしまうようなのがほとんどだったりらしいしな。

それ、

『学校以外での人間関係をほとんど知らずに』

ってことだろう?

そんなのでどうやって<学校以外で活きる人間関係>ってのを教えられるって言うんだ?

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