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第三世代

ビアンカ編 愚直な軍人

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で、本来はカウンターであるはずだった<マスコミ>自身が既得権益となりそれが生み出す<権力>に溺れて役目を果たせない上に自浄作用も発揮できなくなったことで、

<マスコミを監視抑制するカウンター>

としてAIを頼る羽目に。

いわゆる<メディアスクラム>と呼ばれるような過剰な報道やそれの基となる<行き過ぎた取材>について、AIが警告を出す仕組みが作られたんだと。

とは言え、最初期の頃にはその正確性も必ずしも高くなかったことから有効性に疑問ももたれたそうだが、人間と違って予断を持たずただただ淡々とデータを蓄積し経験を積むことで、百年も経てばかなりの精度を発揮するようになったそうだ。

が、そうやってAIが頑張ってくれる一方で、人間(地球人)という奴は本当におかしなところに知恵を働かす生き物でもあるからか、そのAIの判断をすり抜けてまでスクープを狙う輩もいなくならず、<いたちごっこ>の様相も呈しているとのこと。しかもその手口は、完全にテロリストのそれに。

とは言え、さすがに個人の敷地内に勝手に入り込んだり、およそ常識にそぐわないような時間帯にアポもなくいきなり押しかけるなどというのは、大幅に減ったとも。

不法侵入などについては、それを確認したと同時に警察に通報されるようになり、しっかり犯罪として対処されるようになったからな。

『<報道の自由>を掲げれば免責される』

ってこともなくなっていったらしい。



などと、いつものように脱線しつつ、俺も、モニカやテレジアのカメラ越しに未来みらいを見守った。

しばらく鼻から上を水面から出した状態でおとなしくしていたかと思うと、体力が回復したのか、突然、川から飛び出して、やはり哨戒任務に就いていたグレイ目掛けて走り、足に掴まって同じように押し始める。

「ぐおーっ!!」

その幼い姿にそぐわない<猛獣の咆哮>を上げながら。

「……」

そんな未来みらいを、グレイは黙って受け止める。

彼が怪我をしないように、僅かに力を受け流しながらも、丁寧に相手をするグレイの姿は、ハートマンとは別方向に<愚直な軍人>といった感じか。

図らずも、ドラゼ(ドライツェン零号機)に似た感じになったな。

任務に忠実で徹底的に合理的にあろうとすると、ロボットはやっぱりこういう方向に行くのかもしれない。

しかし同時に、対応そのものはすごく丁寧だから、不快ではないんだよな。面倒臭がってはいないんだ。この辺りも、人間(地球人)だとただただ面倒臭がってるだけなのが見え見えなのもいるし。

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