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第三世代

ビアンカ編 感情の動物

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確かに、自然の中で生きるには、厳しい環境に適応する必要はあるかもしれない。しかし人間(地球人)の場合は、もう何代も世代を重ねて、清潔で整えられた環境に適応してしまったから、そんな急に厳しい環境に改めて適応するということができない。ごく稀に、例外的に、適応できる人間(地球人)もいたりするかもしれないが、それは結局、多くの犠牲の上での話だしな。

そうやってむやみに犠牲を出すと、犠牲になった者の親や子や兄弟や家族といった者達に恨みや憎しみが芽生え、復讐心を醸成することになる。

生きるための環境を整える余裕がない、技術がない、リソースがない、という状況の中では確かに環境に適応できない者はふるいに掛けられるのもやむを得なかったりもするんだろう。

ただ、生きるための環境を整える余裕や技術やリソースがある状況でそれをしないというのは、単なる<怠惰>じゃないのか?

やれることをやらずに犠牲を出したというんじゃ、そりゃ、納得もできないさ。

人間(地球人)は<感情の動物>だからな。感情を無視するというのは、大きなリスクになるんだそうだ。

一方、

『感情を無視するというのは、大きなリスクになる』

ということは、当然、<復讐心>を蔑ろにすることもできないという意味でもある。

<復讐>は認められないが、だからといって<復讐心>を無視すると、やはりそれが暴走することがあるのも事実。裁判で無罪を言い渡された<強姦察人事件の被告>が法廷を出た直後に<被害者の父親>がこれを銃撃。射殺したという事件があったのも事実だ。

これは、被告側は経済的に裕福で優秀な弁護士などを大量に雇えたのに対して、被害者側は決して裕福でもなかったことでまともなケアさえ受けられず、被害者の父親は精神疾患を患い、結果として事件を起こすに至ったとのこと。

しかもこの事件、さらに胸糞なのが、被告を射殺した<被害者の父親>が心神喪失状態にあったということで執行猶予付きの有罪判決が出たものの、それを不服とした殺された被告の親族に雇われた<殺し屋>によって殺害されるという結末に。

そしてこのことをきっかけにデモが起こり、やがてデモ隊の一部が暴徒化。<被告の親族が住んでいた街>を襲撃し、被告とも一連の事件とも何の関係もなかった街の住民七人と、たまたま買い物に来ていた母と子の合わせて九人が犠牲になるという、大変な惨事となったそうだ。

だから、そもそも最初の<強姦殺人事件>が起こっていなければこうはならなかったのは当然として、せめて、<強姦殺人事件の被害者の父親>も丁寧なケアを受けられていればという部分でも大いに反省すべき点があるとされ、以降、<事件被害者やその遺族>に対するケアが徹底されるようになっていったんだと。

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